前回、久々に「ナウい」という言葉を使ったが、この言葉についてはやけに印象深く記憶に残っている出来事がある。
その昔、私が10歳くらいの頃にアニメ専門誌「アニメージュ」を読んでいたら、読者のお便り欄に、
「先月のこの欄で編集部は “ナウい” という流行語を使っていたが、いかがなものか」
「徳間書店のような立派な出版社が使っていい言葉だろうか」
という苦情の言葉が掲載されていたのだ。
他誌に比べると「アニメージュ」は定価が高めで、表紙も造本も内容も格が上のような雰囲気があったので、「立派な」ではなく「一流」出版社という表現だったような気もする。
それに対して、真面目に謝罪するどころか、
「ナウい言葉を使う、ナウい徳間書店で~す!!」
と、たったそれだけの見事な返しでその場を収めていた。
もしかすると投書の主は激怒して、苦情電話の一本も入れたかもしれないが、小学生の私はすっかりこの返答に魅了されてしまった。
悪いことを注意されているのに謝らないどころか、開き直って、ふざけ気味に返してしまう。そもそも「ナウい」という表現が悪いのかどうか、そういった議論をすっ飛ばして、笑いに変えてしまう。そういう態度に未知の可能性を見たのであった。
その時の実感を今そのまま再現はできないが、「こういうふざけた大人になりたい」という憧れのようなものも感じていたのではと思う。
あれから数十年ほど経った今、十分すぎるほどふざけた調子の大人になっている。良し悪しは別として……。