原作の「ハムレット」より二次創作の方が面白い!!
……という印象が自分の中であまりにも強すぎるため、一般論としてはかなり無理があるのかもしれない。
特に「ハムレット日記」「兇天使」の二作は、ほんの数行を読み返すだけで冷静ではいられなくなり、自分の中で「絶賛の嵐!」「鳴りやまぬ拍手!」「観客総立ち!」「最高!」といった心境になる。
古今東西のあらゆる創作物で、ここまで自分を興奮させる作品は、他に思いつかない(ジャンルを問わず)。
少し頭を冷やして冷静に考えると、原作の「ハムレット」は、やはりシェイクスピアの作品中、最高の作品で、上演回数も多い。
そして、何といっても名場面が多い。
同じように有名な「ロミオとジュリエット」だとバルコニーの場面くらいしか思いつかないが、「ハムレット」は、まず夜中に出現する父親の幽霊が鎧姿というのが絵になるし、悩めるハムレットが「狂人を演じる」という突飛な行動は今風にいうと中二病的だし、「芝居の中で芝居を行う」という趣向も、演劇関係者にはたまらないはずである。
その後のポローニアスとの関係(ミッドポイント)、絵画の主題になるオフィーリアの運命、国外に誘導されてしまう罠のくだり、有名な墓堀人の場面、そして最後の決闘、と名場面が盛りだくさんである。
これだけ様々な展開があって、たとえば志賀直哉はいきなり「クローディアスは本当に悪い人物なのか?」と疑問を持ったりする。
で、少し見方を変えたり、仮説を持って読み直すと派生的にあっちの場面にもこっちの場面にも影響が広がるので、そこがまた面白いのである。変な言い方だが、二次創作を楽しむために、義務として「ハムレット」を読むという順番でも、そこそこ楽しいのかもしれない。自分は初読の際の印象を、もうすっかり忘れてしまっている。
ちなみに私は岩波文庫版がすっきりしていて読みやすい気がするのだが、厳密に細かく比較した訳ではない(岩波以外に新潮、ちくま、光文社の合計4通りくらい読んでいる)。