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「ハムレット」周辺の創作の巻

「ハムレット」には昔から二次創作的な作品が結構ある。

私が感銘を受けたのは大岡昇平の「ハムレット日記」で、タイトルの通り日記形式でハムレットの心理を描いている。

そういう風に形式を変えて、作中人物を描くという方法自体が新奇なものに感じられたし、ハムレット以外の人物の心理や行動、政治的な各国の思惑なども描かれている。

大筋は原作の通りだが、細やかで大胆な想像が混じっており、本家より名作ではないかと思うほどだった。

ちなみに日記形式というのは志賀直哉の「クローディアスの日記」の方が早く、福田恆存の「ホレイショ―日記」もある。

太宰治の「新ハムレット」もさほど長くない。これは人物がですます調で話すのがユーモラスで、太宰治の喜劇的な側面がよく出ている。

野阿梓の「兇天使」という幻想SF長編もある。これもハムレットの世界を描きながら、もっとスケールの大きな物語も並行して語られるので、読む人を選ぶ作品になっている。

肝心のシェイクスピアの「ハムレット」は、おすすめできるかというと今ひとつ推しきれない。上演すると二時間半から三時間になるという作品なだけに、戯曲もとにかく長い。

簡単でお勧めしたいのは、まずウィキペディアであらすじを読んで、次に太宰治の「新ハムレット」に進むコースである。

それで本物に触れたくなった人には簡略版の「ハムレット Q1」(光文社文庫)があるし、そこまで来れば「ハムレット日記」はお勧めしたい。

私の書いた「エルシノア城~」は、基本的に「悲劇を喜劇にしてしまいたい」という意気込みで書いている。大まかな枠組みや事件は原作をなぞっているので、原作を知らなくてもすんなり読めるようになっている。

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