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「一番 よくでるよ!」の巻

ゲームに使うために漢字検定の問題集を読んでいると、ページの上の方に変なキャラクターが描いてあった。

「一番 よくでるよ!」

と叫んでいるが、次の頁も次の頁も同じことばかり言っている。

一番がいくつあれば気が済むというのか。

次、また次、と頁をめくって行っても、せいぜい、

「これも ねらわれる!」

くらいしか言っていない。

いくら調べても、本全体で台詞が4種類しかない。

同じことを映画やドラマや漫画でやったら、前衛的な表現になるところだが、これは単に、

「適当に埋めときゃいいんでしょ?」

といった怠惰と堕落と、配慮の無さが生んだ表現なのだ。

いや、表現ですらなくて、何というか最小限の「絵と台詞」でしかない。

伝えようという気がない。

表現未満というか、無意味のあまり誰にも「つまらない」とすら思われずに存在しているだけの、空虚そのものが具現化されたようなキャラクターである。

こういう退屈さというのは、学習教材や参考書などに特有のつまらなさである。子供の頃は、この種のつまらなさに囲まれていた。

このキャラクターには名前も性格もなく、誰かに描かれた後は、ただずっと壊れた機械かハンコのように同じ言葉を言うだけなのだ……。

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