田辺聖子の戦争体験の本を読んでいるうちに、梯(かけはし)久美子の著作を知り、図書館にあったエッセー集「好きになった人」を読んでみた。
基本的にノンフィクション作家の取材こぼれ話、思い出話なのだが、気取りがなく、かといって生真面目すぎず、久々に良いエッセー集を読んだという感触を思い出した。
リリー・フランキー、児玉清、森瑤子など、登場する人物がいま一つ自分の好みとは合わない。
にもかかわらず印象深いエピソードが多く、胸の奥の琴線がビビン! とかき鳴らされるような、心の奥に言葉が届く感じというか。戦争関係の話題が多いこともあるが、腹の奥まで何かが伝わってきた。
元のタイトルは「猫を抱いた父」とのことで、それと比較すると「好きになった人」の方が断然よい。