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「あのこは貴族」の巻

「あのこは貴族」は世評の高い映画で、以前から気にはしていたが見そびれていた。実際に見てみると確かに素晴らしい作品だった。

日本が舞台で「階級差」についてはなかなか描けないだろうし、前例を思いつけない。そういった目の付け所も、描写や台詞に省略が多い点も、画面の落ち着きや美しさも、キャスティングもみな優れている。

省略と抑制というと、最初のパートのお見合いなど、あまりにも主人公がお嬢様で、結婚相手として紹介された相手は庶民的すぎる、という場合「あの男はダメよね~」「これは相手と違い過ぎる」というセリフや後日のやり取りすら出てこない。「格差」というより「落差」が画面に出てくるものの、映画としては無言のまま進行、となる。そこが寡黙で、スピーディで、抑制が利いていて、品よく流れていくのが見事だった。

昔は映画の途中で邪魔が入ると、特に初見の場合は腹が立ったものだが、今は見ながらあれこれ考え過ぎるので、かえって自分の考えが邪魔になる。だからほどほどに休みつつ、3日に分けて考えを整理しながら見ることになったものの、それがまた良かった。

最後の方で、ため息混じりに「幻の東京」とか言い出す場面がある。これはかなりよろしくない、邦画の癖のように感じる。

「何とかってさあ、……何とかなんだよね……」

と、ため息混じりに、夜景をバックに語る。こういうのが予告編で出てくると、これはもうダメだな、ご臨終ですと言いたくなる。本作は最後の最後でコケてしまったが、それでもかなりの傑作と思う。

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