久々にキングの小説を読んで、推敲をしている文章とそうでない文章の違いを以前よりも実感できるように思われた。
「一度原稿を完成させてから、しばらく間を置いて徹底的に推敲する」
と言っている作家として私が知っているのはキングと大江健三郎である。自分も自作をあれこれ書き足したり削ったりしているので「分かった」というのは烏滸がましいが、やはり時間と手間をかけて厚み、重み、膨らみの出た文章と、そうでない文章の違いというものはかなりある。
時間をかけなければ出てこない言葉、比喩、考察、描写といったものはあるし、逆にいうと文章から一種の「軽率さ」を丁寧に抜く作業がされているかどうかでもある。
一方、音楽でいう「一発録り」の文章の勢い、スピード感、きらめきといった推敲しない派の良さもかえって貴重なものと思えてくる。倉橋由美子や山田詠美はそちらのタイプで、こちらが駄目ということはない。むしろ、両方の良い点を取り入れられないかと思うほどである。