以前書いた「仮装しないパーティ」を1万字以内にしようと読み返すが、どうしてもできなかった。
その後、また7,8回ほど読み返す。
再検討していると、あちこちの字数が少しだけ増えたり減ったり、補ったり差し替えたりで、次第に表現のピントが合ってくるのだが、全体の文字数としては減らしにくくなる。
それでも、苦労に苦労を重ねてやっと9927字版を作った。
作中に出てくるのは「単なる忘年会」ではなくて「大学四年の最後の忘年会」として、年が明けると3月には地元に戻り、就職するというタイミングだったのだ、と書き足すことにした。そうしないと「その後は某君と一度も会わなかった」ことにリアリティが出ない。
この部分以外も、言葉を削るつもりで読み直すと内容面で修正するべき箇所が見つかる。とりわけ説明や描写や比喩は冗漫になりやすい。
「つられて皆が笑った。そのせいで、急に皆の心がほぐれて、打ち解けた雰囲気が部屋に拡がったのであった。」
といった文章は、切り詰めると、
「つられて皆が笑い、雰囲気が明るくなった。」
くらいにまで削れるのだが、これが100%良いとも言い切れない。
さらに「すっかり」を入れたくなったとする。
A「つられて皆が笑い、すっかり雰囲気が明るくなった。」
B「つられて皆が笑い、雰囲気がすっかり明るくなった。」
このどちらが良いのか、読み返すたびに分からなくなってくる。
「が」が続くのは良くないからAの方がいいのか。
それとも、対句風になっているBの方が読みやすいのか。
謎である。
「が」を続けたくないので、
C「つられて皆が笑い、雰囲気はすっかり明るくなった。」
としてはどうか。それなら、
D「つられて皆が笑い、すっかり雰囲気は明るくなった。」
の方が……、と迷ってしまう。
しばらく削っていると、今度は某君を女性にした方が良いのではと思いついた。
女性にすると、たった一度しか言葉を交わしていない、淡い感じの交流の思い出話になる。しかし整い過ぎるし、恋愛要素がほのかに漂うのが作品として良いかどうか、疑問である。
全体の印象が良くなるとは思うのだが、一般受けし過ぎで気味が悪い。妙に甘ったるくなってしまうというか、これまで真っ白なTシャツだったものが、急に淡いピンク色に染まってしまったような、変な感じがする。