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作り話のウソ売り場の巻

小説の本とは、作り話を文章で書いた紙の束であって、よく考えたらそんなものを販売する店が日本国内のあちこちにあって、人びとがしょっちゅう訪れて購入していくなど、実におかしな話である。

「するってえと何かい? お前の言ってるその店ってのは、嘘だと分かってる話を販売してるってのかい?」

「ええ、その通りで。しかも、結構な繁盛ぶりでやした」

「そりゃあ信じられねえや。いいかお前、世の中はおおむね噓ばっかりで出来上がってる、それが社会とか世間ってえもんだろ?」

「仰る通りで」

「そういう所でだ、 “世の中は噓ばっかり、この本に書いてあることが真実!” って、そういう内容の文を売るってんなら分かるけどもな。その店の売り物が、最初から嘘や作り話でございますって、それが分かってりゃわざわざ買って読むことねえやな」

「ねえでやす……」

「おめえの話が本当だとすればだな、ウソ売り場ってもんがあって、そこに金を払って、はなっから大噓の塊を買って読もうってえ物好きが、一定数どころか大勢いなきゃ商売にゃならねえ、ってそういうこったぜ」

「……こりゃあどうも、あっしの早とちりか、でもなきゃ勘違いだったようで……」

話が終ってしまった。

いったい、この世界に存在している書店とは何なのだろうか。

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