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新潮社と詩集の巻

新潮社のイメージの話の続き。

70-80年代くらいまでの新潮文庫からは、明治大正~戦後までの詩人の名前を冠した詩集が多く出ていた。いわばベスト盤的なもので、書店の一角に新潮文庫のコーナーがあるとすると、そのうち5%くらいは「〇〇〇詩集」がずらりと揃っていた。

当時、新潮文庫以外からは中公文庫で「日本の詩歌」シリーズが出ていて、このいずれかと、もう少し大きなサイズの現代詩文庫(思潮社)があったくらいで、それでほぼ詩に関しては十分だった。海外の詩に関しても、やはり新潮文庫から堀口大学訳詩集とか、リルケとか、色々出ていた。

また、新潮文庫は肩書が「詩人」以外の人の書いた歌詞にまで目配りが行き届いており、松本隆、桑田佳祐、ムーンライダーズの詩集まで出ていたので、その「わかっている」感は半端でなく、古典から現代まで守備範囲の広さと深さとスマートさを兼ね備えている印象があった。

2023年の今、詩を新潮文庫で読めるのは宮沢賢治と「智恵子抄」くらいではないだろうか。日本の詩も海外の詩も、どちらかというと岩波文庫の方が充実している気がする。戦後から現在までの詩人の作品集というと、ちくま文庫や講談社文芸文庫などにチラホラ残っているくらいではないだろうか。

読者が減り、ジャンル自体が衰退する一方なので仕方がないとはいえ、やはり新潮社の撤退ぶりが目立つ。「詩」のみならず「俳句・短歌」「歌詞」というジャンルにはすっかり見切りを付けました、さようなら~、という態度しか感じられない。イメージとしてはやはり、あまり良くない。


(続く)

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