「ゴッドファーザー」下巻の、ソニーの愛人が手術をしてどうこうのあたりは、さすがに通俗的興味で引っ張っているように感じられた。要するにエロと暴力で引っ張っているのかと……。
しかし、冷静によく考えると、この人物の視点を通じて、長男と次男と三男の関係を再整理しているパートなので、この部分によって物語が立体的に仕切り直されている。
つまり、軽そうに見えるが、複雑な人間関係のハブになっている重要人物なのだ。これは長編を書く際のテクニックとして、学ぶべきものがある。
この人物のおかげで長男は粗暴なだけではなく、次男も臆病なだけでない人間なのだと分かり、やがて次男の関わるカジノは三男の運命にも大きな影を落とすことになる。
でもって、その後はマイケルのパートになって、こっちはシチリアに潜伏中なのに若い女の子に一目ぼれ、という展開である。
これも不必要に見えなくはないが、女の子がソニーの愛人と性質的にうまく対になっているので、合間にマフィアの誕生の話や、水に関する利権や警察の腐敗、マイケルが次第に凄みを帯びてくる話題が絡む。ここまでで下巻の半分くらい。