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小説家に求められる資質の巻

小説家に求められる資質を考えてみると、大雑把にはこんな感じだろうか。


A・愚直で勤勉で、細かい点に見落としがないよう努める真面目さ。計画性。諦めない粘り強さ、辛抱強さ。

B・他と異なる視点から物事を考えようとする独自性。破天荒、狂気、非常識、へそ曲がり。外へずれようとする気質のようなもの。アウトサイダー性、夢想的。近道を発見したがる。はぐれ者。孤独への耐性。皆と仲良くしなくても一人でいられること。

C・読者への配慮、気遣い、もてなし。サービス精神、奉仕する態度。仕える喜び。思いやり。皆の喜びを自分の喜びとする。健全な社会性。皆と一緒、とまではいわなくてもある範囲内で円満な関係を築ける。


まとめると、「真面目で不真面目」「反社会的で社会的」「頑固で柔軟」とでもいった、矛盾した人物像ができあがる。

これらの要素のうち、どのようなバランスで自分の特性を伸ばすか、その時々に応じて出し入れできるか、といった統合能力も必要である。

数学者ガウスの有名なエピソードに「1から100までの整数の和を答えよ」と先生に命じられて、すぐに良い方法を見つけた、というものがあったが、このエピソードのような「変っているが妥当で手間のかからないアイディア」を思いつく能力が、創作家には必要と思われる。一般的な作家像としても「何かをひらめく」「アイディアが豊富」というのはよくある。

ところが、そうした力だけでは小説は書けない。

むしろ、その数学者と同じクラスにいて「1+2+3+4+……」と、無我夢中で計算している愚直な生徒のような資質もまた必要だし、その立場(いわばモブキャラ)の心理を正確に把握できるか、表現できるかどうかも重要である。

と同時に「先生のキャラクターを、もっと意地悪にしてはどうか?」と主人公を引き立てる演出プランを考える資質も問われる。

そう考えると、「人格的、能力的な幅広さ+自己を含めて客観視する能力」みたいなものだろうか。

「そんな万能の天才がいるか!!」と言いたくなってきた。

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