二時間半近くあるドラマ「リチャード2世」はいかにも長そうな雰囲気で、途中でいったん止めるつもりで見始めたら、最初から掴みがうまい。
王様の前に二人の人物がいて、
A:裏切り者はBですぞ!
B:いやいや、Aの方こそ謀反を企てております!
「どうなるんだ?」と思っているうちに、そのまま最後まで見終えてしまった。
しばらくするとこれは「ゴッドファーザー」のパート1,2の面白さに似ているように思えてきた。以前「創作論のメモ」で書いた「上昇」と「下降」の話でもあると気づいた。
一人の人間に起きる「上昇が実は下降であった」という形よりも、「上昇する人物」と「下降する人物」を併置させて、どこかの地点で交錯する、すれ違う、あるいは権利の移譲が行われるというパターンの方がわかりやすい。
「ゴッドファーザー」の場合は「話し合いを持ちかけてくる奴が裏切り者だ」という、一種の予言か遺言のような会話があり、そこが上昇する人物と下降する人物のすれ違い地点になる(他にも複数あり、それぞれ興味深い)。
「リチャード2世」の場合はある物を渡す場面になるので、それを井戸と二つの桶に譬える箇所など、実に素晴らしかった。
原作でもこのセリフは大きなポイントになるらしく、予備知識なしでこの場面に感動できてよかった。