「取り替え子」を最後まで読んだ。
最終章でいきなり〇〇〇が変ったり、新しい登場人物が出てきたり、複雑で入り組んだ結末になっており、様々な仮説や考えが重なり合って、それらが観念の音楽のようになっている。
生まれ変わりや生み直すというファンタジックな発想を大江健三郎が書いていて、もっと現実的(可能性としてはあり得る)な「祖母と思っていた人物が実は✕✕」「育てていた父親は実は✕」という家族の形態を筒井康隆が書いているというのも興味深い。
ただしどうしても仮名が多く、誰が誰を指すという指示が曖昧なので、読者は限られて当然と思われる。
自分にはそれが一応、判別できる。
これはかなり大きな利点で、生まれつき声が良いとか、運動神経抜群とか、暗記が得意とか、そういった特技に近いような価値があるとすら言えそう、これは積み重ねによって習得した「大江健三郎読者資格1級」カードを持っているのと同じではないかと思った。