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「樋口一葉赤貧日記」の巻

この本はたまたま書店で見かけて、たまたまその後に図書館にあったので読んでみたという、通りすがりの本。

内容は金銭事情から読み解く樋口一葉の生涯、という感じで、冒頭の両親の駆け落ちあたりから既に面白い。金の力でやっと身分を買ったのだが、その直後に幕府が大政奉還してしまう。最悪のタイミングである。

生まれた時点ではかなりの金持ちだったのに、その後は父親の死、転居に次ぐ転居、借金に次ぐ借金、で雪だるま式に借金が重なる。このあたりの行き詰まり方にあまり深刻さがなく、ちょっとお金が入ると寄席に行ったりお花見に行ったりもするので、緊張感に欠けている。不幸の連続というのは、他人の不幸は蜜の味というくらいで、どこかユーモアすら感じる。

「縁」を頼りにお金を融通し合う時代から、もっと冷たい「円」の時代に移行しつつあったのだと筆者は書いている。他の人の感想を読んでみたら「金は天下の回り物」という意識もあったのではないかと書かれていて、なるほどと思った。

結果として一葉は、

1.文才があって 2.しかも女性

という難しい条件をクリアして、なおかつ

3.貧困を他人事でなく、生々しい自分事として体験した

という3つの要素を得たことで後世に残る小説を書き得た、というのが結論になる。

もし、長く生きていたとしたら社会に目を向けていた筈なので、小説は書かなかっただろうという予想もあり、それもまた納得できる結論であった。

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