先日の皆既月食、皆さん見ましたか? 皆既月食とその月に天王星が隠れる天王星食の組み合わせが442年ぶりだとか。私の地元では肉眼でよく見えませんでしたが、国立天文台のライブ配信を見させていただいていました。すごいなと思ったのは、この天体ショーを見るために日本中の人々が同じ空を見ていたこと。映画やドラマでもなく、野球でもなく、お笑いでもなく、あの時間でもっとも視聴率を稼いでいたコンテンツではないでしょうか。月に影がかかるというそれだけに、普段は趣味も嗜好も異なる世代も異なる何億もの人が熱中していたのです。もし自由に皆既月食を起こせれば、ひと財産稼げますよ。それは戯言ですが、似たようなもので花火大会があります。夜空に打ち上がる花火もまた人々を釘付けにします。皆既月食は無理でも花火大会なら人力で可能です。最近ではドローンを使った光のショーなども東京五輪の開会式で話題になりました。趣味や世代の壁を越えて人々を魅了するものはなんなのか、小説でもそれを突き詰めることが大ヒットのカギじゃないかと思うわけです。皆さんも皆既月食を起こしましょう、花火を打ち上げましょう、ドローンを飛ばしましょう。面白いことがあれば、それだけで人は上を向いて生きていける。今回、私がチョイスした皆既月食も、ぜひご覧あれ。

ピックアップ

幼き竜姫よ! 古き悲しみを紡いで希望の光となりて明日を照らさん!

  • ★★★ Excellent!!!

 TCGの世界で竜人の少女ティアとして転生した主人公。だが、キャラメイクの手違いでパックが購入できなくなってしまった! 初期パックと、唯一のレアカードの喋る魔法書を相棒にハードな異世界生活が始まる。

 カードゲームであれば普通はお金を稼ぎ、カードパックを購入し、自分のデッキを強化していくものですが、スキルの制限によりパックを購入できないティアは、クリア報酬でもらえるパックを目当てに過酷なクエストに挑みます。

 平和な現代とは違い、異世界は弱肉強食。魔法が使えてもか弱い少女であるティアには危険がいっぱい。しかしお人好しなティアは困っている人を救うために自分から厄介事に巻き込まれて、さまざまな人々やモンスターたちと出会います。

 ひとりひとりが意志を持ち、ゲームのNPCではなくなった彼らと絆を結び、仲間を集めていくストーリーが心を揺さぶるのです。

 TCGプレイヤーはカードのフレーバーテキストから想像の翼を広げて世界観を楽しむものですが、そのカードに描かれたモンスターや人物が私たちと同じようにかけがえのない命を得て、1枚1枚が壮大な人生を生きている息吹を感じさせてくれます。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲 優詩)

目指せ声優! 何かに本気になれる奴が一番カッコイイんだ!

  • ★★★ Excellent!!!

 中学卒業とともに同級生の桃井美樹に告白した虹野大河は、「声優を目指しているから付き合えない」と玉砕してしまう。諦めきれない大河は声優を目指し、高校から演劇部に入ることに。しかし大河の進学した越谷中央高校演劇部は廃部寸前で……。青春を恋と演劇にかける少年少女の熱血学園ストーリーです。

 片思いの女の子を振り向かせたい、ただそのために何事にも本気で打ち込む主人公、虹野大河の情熱が眩しいです。

 廃部寸前の演劇部を復活させるため、部員を集め、部室を整理し、脚本を用意し、練習を重ねる。しかし、これまで演技などやったことがない、おまけにアニメや映画もそれほど見ていない大河の演技は、経験者の他の部員より見劣りしてしまう。

 努力をしても届かなかった主演の座、己の不甲斐なさに打ちのめされる大河ですが、何も得られなかったわけではなりません。誰よりも強い熱意と行動力で演劇部のために奔走する彼のことを皆が信頼し、いつの間にか新部長と認められていくのです。

 何かに熱中すること、将来の夢を語ることが恥ずかしい。現代の若者にはそういう臆病な一面があります。努力は報われるとは限らない。けれど誰かに認めて欲しいならば、努力することです。報われない努力は必ず別のなにかで報われる。そっちのほうが実は価値があるものです。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲 優詩)

勝つために手段を選ばす! 最弱でもできる覇権の握りかた

  • ★★★ Excellent!!!

 ごく平凡な少年・月波幸人が入学した「ヌマ高」は、県内のヤンキーが集まる底辺不良高校だった。喧嘩上等、暴力こそすべての校風で、幸人は謎の美女から渡された宮本武蔵の『五輪書』の教えに従い、殺伐とした学校生活を生き抜いていく。凶暴なヤンキーの中に放り込まれた普通の男子生徒が頭脳とハッタリで成り上がる青春活劇です。

 江戸時代の剣豪・宮本武蔵が書き遺した兵法書『五輪書』は、現代のビジネスマンの必読書といわれています。それは書物が伝えるのが、兵法や武芸だけでなく、どんな手段を用いても勝つ、徹底した合理主義にあるからです。

 その哲学に共感した幸人は、不意打ち、騙し打ち、ハッタリ、ブラフ、ありとあらゆる手を使って不良グループを出し抜いていきます。

 かといってただの卑怯者ではありません、幸人が力を発揮するのは常に誰かを助けるとき。不良たちの非道を目にし、自分を奮い立たせ、弱者が強者に抗う術として知恵と機転を巡らせて相手を翻弄する。義を見てせざるは勇なきなり。これぞ武士道精神です。

 不良を撃退していくうちに、いつしか一目置かれる存在となっていきますが、より格上の不良グループに目をつけられ……、幸人が望む平和が訪れるのは果たしていつの日か。

 皆さんもこの作品を読めば、心の悩みや問題を解決するヒントが見つかるかもしれません。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲 優詩)

90年代のゲームキッズ! あの頃のぼくらは勇者だった

  • ★★★ Excellent!!!

 かつて日本中の子供たちが熱狂した、ゲーム史に綺羅星の如く輝くゲームソフトがあった。

 冒険と結婚と親子をテーマにした、今も幼馴染かお嬢様かでネット上で大議論を巻き起こす『ドラゴンクエストⅤ』。
 落ちものパズルゲーでありながら個性豊かなモンスターたちが独自の世界観を展開する『すーぱーぷよぷよ』。
 コース上に落ちているアイテムによって順位が逆転する、友達との駆け引きが熱い『スーパーマリオカート』。
 6人の主要キャラクターの中から主人公と仲間を選ぶことで、物語がさまざまに変化する『聖剣伝説3』。
 太正桜に浪漫の嵐、帝都の平和を守るため悪と戦う乙女たちの華麗な歌劇『サクラ大戦』。

 作者のぴこたんすたーさんが幾度もプレイし、子供心に感動と興奮を刻まれた思い出話に共感してしまいます。
 若い読者の皆さんでも、いまも復刻版やシリーズの続編が発売されているので、ゲーム好きならば知っているのでは?
 十年たっても、二十年たっても、その時代のゲーマーに愛され、不死鳥のように灰の中から蘇る。
 それはいつの時代も変わらない、人々を魅了する力がゲームにはあるからではないでしょうか。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲 優詩)