新年あけましておめでとうございます。正月休みに骨休めできたと思ったのも束の間、仕事始め、新学期……と一気に慌ただしくなった方も多いのではないでしょうか。ストレスを解消するのにぴったりのジャンルといえば? そう、ボーイズラブです! 全く別の人生を生きていた二人が近づく瞬間、仲違いしながらもかけがえのない感情が育まれる過程、「分かり合えない」と思っていた相手を助けるために人生をかけている自分の発見……。カクヨムには、男同士のケミストリーを楽しみつつ、自分の日常では味わえないスリリングが楽しめる作品が盛り沢山。さくっと読めるものから、じっくり追いかけられるものまで、幅広く投稿されています。今回は10年以上BL小説を愛読してきたライター・ひらりさが、カクヨムで人気のBL作品の中から「非日常が味わえるBL」4選をレコメンドします。面白いBLを読んで、日々の疲れを洗い流しませんか?

ピックアップ

コミュ障の年下同居人は、いつでも俺を守る最強の殺し屋

  • ★★★ Excellent!!!

B L初心者でもライトに、ツッコミを入れながら楽しく読めるこちらの作品。

中野坂上駅のそばで一人暮らしをするアラフォーサラリーマンの中野がある晩バーで拾ってしまったのが、「坂上(サカガミ)」と明らかな偽名を名乗る年下の男。中野の部屋に居ついた猫のような坂上を、気がつくと受け入れてしまっている中野だったが、素性を明かさずたまに大金を持ち帰る坂上がヤバイ奴なのは理解している。一定の距離を取っているつもりだったのに、なんの気の迷いか体を重ねてしまったその夜、中野と坂上は何者かに襲撃され、坂上の「殺し屋」稼業に中野の日常も巻き込まれていく。

「誰がどう見たって明らかな違法行為がたびたび登場しますが、本作はあくまでフィクションです」の注意書きどおり、いたって普通に会社勤めをしている中野くんの生活が、殺し屋たちの世界観にどんどん浸食されていくのが本作の面白さ。久しぶりに再会した元カノが襲撃してきたり、長年の同僚までもが銃を持ち出してきたり。日常離れした展開を楽しみつつも、「今回はどんな風に坂上くんが助けに来るんだろう」とワクワクしながら読み進められる、安心感のあるBLです。


(「非日常が味わえるBL特集」4選/文=ひらりさ)

会社の同僚に悪魔がいて、しかも自分のことを好きだったら?

  • ★★★ Excellent!!!

大人な二人のハートフルな恋模様を楽しみたい!ちょっとファンタジー要素もあればなおよし、というあなたにすすめたいのがこちら。

とある一流企業で働く峯田君は、体も心もマッチョでタフなところを除けば、ごく平凡な成人男性。ただし、なぜか彼の職場には、全く普通ではない同僚、悪魔の馬場君がいる。浮世離れした美貌を持ちながらも、いつもニコニコしていて親切な馬場君。しかし周りの同僚の願いを気軽に叶えてしまうそのおおらかさが人間の甘えを助長しているように感じて、根がマッチョな峯田君はモヤモヤしていた。そんなある日峯田君は、仕事上の重大なミスを犯してしまい、一瞬馬場君に頼る誘惑にかられてしまって……。

実は峯田君に恋をしているものの、峯田君が全く自分を頼ってくれないために、ジリジリしていた馬場君。峯田君のマッチョさと、「お願い事をしてもらわないと人にお願いができない」という悪魔の性質によって、遠く保たれていた二人の距離感が、ちょっとずつ変わっていく様子がとにかく甘酸っぱい! じれったい! 全9話という長さも程よい、大人のためのフェアリーテイルです。 


(「非日常が味わえるBL特集」4選/文=ひらりさ)

死んだ女に導かれ、“不能”な二人は出会う

  • ★★★ Excellent!!!

女性含む三角関係やヘビーな設定も大丈夫!むしろ好物!という方、いますよね? そんなあなたにぜひ読んで欲しいのがこちらの「不能共」。

交際していた恋人・加奈子が実は既婚者だと知った朝陽大輝。別れを告げて関係を清算しようとした大輝だったが、なんと加奈子は大輝の目の前で鉄道の線路に飛び込み、自殺してしまう。葬儀後、大輝のもとを訪れたのはその加奈子の夫・清瀬隆。二人の関係を知っており、「貴方しか加奈子の話が出来る相手がいない」と言い張る清瀬。早く清瀬から自由になりたい大輝だったが、自分に執着してくる隆と接するうち、単純な嫌悪感だけではない感情を抱いていく。

目の前で彼女に死なれた男×その彼女の夫だった男、という「そんな修羅場どうして思いつくの?」といいたくなるほどに重い作品です。しかし「朝陽大輝」「清瀬隆」、そして「清瀬加奈子」と、メインキャラクターそれぞれの視点を交代しながら展開していく物語にはしっかりとした説得力があります。「愛」と一言では言い切れない唯一無二の関係に、胸を締め付けられる作品です。


(「非日常が味わえるBL特集」4選/文=ひらりさ)