カクヨム発ファンタジー作品求む!
1,415 作品
この度は「第2回ドラゴンノベルス新世代ファンタジー小説コンテスト」にご応募いただき誠にありがとうございました。
第2回となる今回は、第1回を上回る1,415作品ものご応募をいただきました。重ねてお礼申し上げます。
「ドラゴンノベルス新世代ファンタジー小説コンテスト」では、読者選考ののち編集部内の一次選考を経て8月末日に最終選考候補作を発表させていただくという形式をとっております。
この最終選考作15作品は、いずれも高いレベルでエンターテインメントを表現しており、今回の最終選考では受賞作の絞り込みが大変難航いたしましたが、最終的にストーリー、キャラクター、独創性、商業性の各要素において秀でている「トップランカーのプレイヤーでしたが、気分転換にセカンドキャラを作成したらゲームの世界に閉じ込められました」を大賞とさせていただきました。また、今回は大賞以外に5作品の特別賞も選出いたしました。この5作品も、大賞作を上回るストロングポイントを持った作品で甲乙つけがたく、結果昨年よりも多い5作品を特別賞とさていただきました次第です。
この受賞作6作品につきましては、可能な限り早く書籍化して皆さんのお手元にお届けしたいところですが、現在連載中のカクヨム版でもすでに十二分に面白いので今この作品を知った方……今からでもぜひ読んでみてくださいませ! オススメです!!
受賞作の書籍刊行は2021年春からを予定しております。楽しみにお待ちいただけますと幸いです。
また、第3回のコンテストも2021年春の開催を予定しております。
今後もドラゴンノベルスを何卒よろしくお願いいたします。
総評・講評:ゲーム・企画書籍編集部
世界中の人々を虜にしたVRMMO――インフィニティゲートオンラインには、数多の偉業を達成した伝説の旅団が存在していた。旅団の名前は――『天下布武』。そんな旅団を率いる団長がソラだった。トップランカーとして名を馳せたソラは大きな悩みを抱えていた。
『はぁ……有名になり過ぎた。言動の一つ一つが監視されるし、下手なことを言ったら即炎上とか……勘弁してくれよ』
ゲームを純粋に楽しみたい! そんな想いからソラは効率を度外視した趣味全振りのセカンドキャラを作成したのだが――
『この世界を外部から遮断します』
ソラは新たに作成したセカンドキャラの状態でインフィニティゲートオンラインの世界に閉じ込められてしまった。
この物語は、セカンドキャラの状態でゲームの世界に閉じ込められたプレイヤーが、培った経験――プレイヤースキルのみで成り上がる物語である。
剣と魔法の異世界ファンタジーな世界に、侯爵家の子として転生した主人公ルークエイン。
生まれながらにして『才能』を授かったが、その世界では役立たずと言われた錬金術──と勘違いされ、侯爵や義母、腹違いの兄弟から蔑まれて生きてきた。
彼が授かったのは錬金術ではなく、『錬金BOX』。英語が存在しないこの世界で『BOX』は誰にも読めず。
転生者である彼にだけは分かった。そして発音も出来た。
『錬金BOX』=箱に入れた物を自由に錬成できるその箱で、彼は侯爵家を抜け出し成り上がることを夢見る。
そして15歳の成人の儀式の帰り道、家出する気満々だった彼は──その前に奴隷商人に売り渡されてしまう。
奴隷船に乗せられたルークエインは幸運?にも船が沈没して、もうひとりの奴隷少女と共に脱出に成功。
二人は無人島へと上陸し、ルークエインは『錬金BOX』を駆使して、無人島生活を快適なものへと変えていった。
もふもふのモンスターを仲間にし、ダンジョンを復活させ、エリクサーを錬成して姫とドラゴンの子を助ける。
貴族辞めたら楽しい人生が始まった!
使えないとされた能力が、実は希少かつ強力なもので……という、異世界作品に限らず愛されてきた展開を、本作では無人島の開拓、国の運営といったより規模の大きな話と絡めていくことで、この作品独自の面白さをしっかりと作れていました。錬金と付与で行う「組み合わせ」の能力は、キャラクターや設備が増えていくごとに、できることが増えていき……今後、彼らがどう成長していくかを考えるとワクワクする、そんな設定を見事に描写できていました。人間に限らない多種多様な種族の仲間たちも可愛らしく魅力的で、ほのぼのとしつつも毎話発展と進歩が描かれ飽きさせない点も評価し、特別賞に選出させていただきました。
魔剣士アルヴィンは、ダンジョンでモンスターとの戦闘中に日本のサラリーマンだった前世の記憶を思い出す。社畜として辛い社会人生活を送っていたが、現在の救世主パーティーでも似たような立ち位置だったことに気づき、難癖をつけられて追放されたのをきっかけに異世界社畜生活からおさらばして自由に生きようと決意する。一方、救世主パーティーはアルヴィンがいなくなって清々したと高笑い。新たなメンバーを加えて魔王討伐へ旅立った。
――が、すべてをアルヴィン任せにしていた救世主パーティーのメンバーは知る由もなかった。魔物の討伐がうまくいっていたのは、アルヴィンが仕入れた確かな情報や装備があるからこそ可能だったことを。さらに、旅先で訪れた各都市の冒険者ギルド、商会、宿屋、武器・アイテム屋などなど、さまざまな場所で知らず知らずのうちに前世で培った《営業》スキルを駆使して交渉を続けていたアルヴィンが、本人も気づかぬうちにとんでもないコネクションを築き上げていたことを。そして、好き放題していた救世主パーティーには、徐々にそのツケが迫っていることを……。
魔剣と商人、異色の組み合わせが目を引く本作。2つの要素の楽しみどころを両取りできる作品になっています。追放後、営業スキルで得たかつての人脈から魔剣使いとしての活躍の場を得て、それが商売へと繋がっていく――流れるように主人公が成功していく過程を大変心地よく読み進めることができました。主人公の才覚は勿論ですが、周囲の多彩な“コネクション”たちも物語に華を添えており、人助けに商売と様々なモチベーションで楽しむことができます。これらの点を評価し、本作を特別賞に選出させていただきました。
タケルは縮地しか使うことしかできず、武器もろくに扱えない。縮地による高速移動で敵を撹乱し、小さなナイフで時間を掛けてモンスターを討伐するのがタケルのやり方だった。パーティーを組み始めた頃は皆で一致団結し、強力なモンスターも打ち倒していった。
しかし、ある日、パーティリーダーのロイに冒険者ギルドへ呼び出されたタケルは『早く動けるだけならパーティーにいらねぇ。』と言われ、追放されてしまう。
お前は何も貢献していないと言われたようで悔しくなったタケルは、秘境の地に三年間隠居し、縮地の強化と刀の扱いを学ぶことで気づいたら最強になっていた。
その後、タケルは三年ぶりに冒険ギルドへ戻り、最低ランクのFから第二の人生を始めるのだった。
「縮地」しか使えないためにパーティから追放されてしまった主人公が、その「縮地」を極めることで驚異的な能力を発揮することになる作品です。主人公が全てにおいて優秀な作品は数多ありますが、「縮地」という移動能力に特化させるアイデアは面白く、「縮地」を用いて敵を斬り倒していく様は爽快でした。また主人公の活躍だけでなく、周囲のキャラクターも主人公の影響を受けて強くなっていく姿が描かれている点も評価できます。軽めの文章で気持ちよく読むことのできる、異世界ファンタジーらしい作品として特別賞に選出いたしました。
エスカレートするイジメの末に事故死させられた少年は、異世界で猫獣人に生まれ変わった。
体力でも、魔力でも、知力さえも劣るとされる猫獣人の体で、役立たずと言われている空属性魔法を駆使して、少年は気ままな冒険者生活を目指していく。
幼馴染と祭りの屋台を堪能したり、こっちの世界の虐めっ子をギャフンと言わせたり、ゴブリンに追い掛けられて死に物狂いで逃げ回ったり、コボルトに決死の戦いを挑んだり、黒猫ニャンゴの冒険?をお楽しみ下さい。
非力な種族として転生した主人公のニャンゴが、転生者ならではの発想と鍛錬で冒険者として生きていく本作は、しっかりと作りこまれた骨子のある世界観の中を、一人の冒険者として生きていく様が見事な筆致で描かれており、ニャンゴの冒険に心躍らせながら読み進めることができました。キャラクターや彼らの目的・目標にもっと明確な物語性を加えていくことで本作はより魅力的になるのではと思います。そんな作品の可能性を感じ、特別賞に選出させていただきました。
厄年に天涯孤独に死んだ男は災厄を司る神に見いだされ、下級騎士の子息アヴェラとしての生を受け、幸せな生活を送りながら成長した。
そんなある日、災厄を司る神より都市近郊に隠された宝の回収を頼まれた。どうやらそれが転生させた理由らしい。
アヴェラの脳裏に過ぎるのは――災厄の神への感謝。即ち、かつて死に消え去り無に帰す寸前、他の誰でも無くこの自分を選んでくれた事への感謝であった。
不運の神の加護を受けた少女や、死の神の加護を受けたエルフと出会いパーティを結成するのであった。
厄神の加護を授かって異世界に転生した主人公と、厄神の分霊であり、少女と白蛇の姿を使い分けるヤトノを中心として展開する冒険物語を描いた作品です。キャラクターの印象的な設定や緻密な描写に、想像力がかき立てられる物語となっていました。特にヤトノについては主人公を「御兄様」と愛らしく慕う姿や、時には厄神としての恐ろしい力を発揮する姿など、魅力が際立っていると感じました。王道的な冒険ものとしての側面もありつつ、厄神という他にはない設定から展開を生み出す点が、読み手を惹きつける素晴らしい作品でした。
「第2回ドラゴンノベルス新世代ファンタジー小説コンテスト」の中間選考の結果を発表させていただきます。
多数の力作を投稿してくださった皆様、並びに作品を読んでくださった皆様には、改めて深く御礼申し上げます。
※掲載の並びは作品のコンテストへの応募順となっております
講評
VRMMORPGをプレイ中にログアウト不能となり、脱出するためにゲームを攻略していくという王道ストーリーながら、じつは主人公はこのゲームのトップランカーで、それを隠してセカンドキャラでプレイ中という設定が絶妙に効いていて、物語に引き込まれます。また、キャラクターのなりすましという大きな謎を、読者が読み進めるための動機付けとして冒頭に仕込み、効果的に機能させるなど、読ませることに対する意識の高さを感じることができました。ゲームの仕様や敵の攻略法などにリアリティがあり、随所に散りばめられたオンラインゲーム“あるある”にはニヤリとさせられました。基本的な設定の部分で、既存作品との類似性についての指摘もありましたが、それを超え、設定ゲーマーだけでなく、誰もが純粋にワクワクできる冒険小説に昇華させていることを高く評価し、大賞といたしました。