概要
影という名の犬と歩いた十年。その散歩道は小さな喫茶店へ続いた。
事務所前の段ボールから我が家に来たミニチュアダックス、名は『影』。好きなものは散歩とバニラの匂い——十年の暮らしは音と匂いの記憶でできていた。やがて歩幅は縮み、首だけが動く日が増える。静かな別れの朝、残ったのは掌の温もりと、影に教わった時間のつかまえ方。黒をベースに茶が走る内装、コーヒーに一枚のクッキーを添える小さな店を開く。看板犬はいないけれど、入口の水鉢には真鍮の「KAGE」。散歩道の続きで、私はもう一度歩き出す。日常と喪失、そして再生の物語。
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