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概要
その未練、剥いでおきましょうか
「あなたの気持ちは、橙にもなれない、薄橙(うすだいだい)みたいね」
最愛の彼女にそう告げられ、中途半端な喪失感を抱えたフリーライターの「彼」は、携帯の電波も届かない隠れ里「白灰村」を訪れる。
職業的習性から、胸の空洞を埋めるように静寂を録音し始める彼だったが、ICレコーダーには現実には存在しないはずの音が記録されていた。
――じょり、じょり。濡れた布を、ハサミで断ち切るような音。
「いい色だ。薄橙の、一番いい時期だ。……はらわなあかん」
老婆の言葉とともに、彼の顔は自身の重みに耐えかねて「ずり落ち」始める。
鏡に映るのは、目鼻立ちを失い、桃色の筋肉を晒した「かつて私だったもの」。
個の苦しみから逃れるための、残酷な救済。
剥がされた顔が、数千の絶望と縫い合わされ、巨大な「主」の一部
最愛の彼女にそう告げられ、中途半端な喪失感を抱えたフリーライターの「彼」は、携帯の電波も届かない隠れ里「白灰村」を訪れる。
職業的習性から、胸の空洞を埋めるように静寂を録音し始める彼だったが、ICレコーダーには現実には存在しないはずの音が記録されていた。
――じょり、じょり。濡れた布を、ハサミで断ち切るような音。
「いい色だ。薄橙の、一番いい時期だ。……はらわなあかん」
老婆の言葉とともに、彼の顔は自身の重みに耐えかねて「ずり落ち」始める。
鏡に映るのは、目鼻立ちを失い、桃色の筋肉を晒した「かつて私だったもの」。
個の苦しみから逃れるための、残酷な救済。
剥がされた顔が、数千の絶望と縫い合わされ、巨大な「主」の一部
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