蕾の花が咲く頃に。
白川 優雨 (しらかわ ゆう)
蕾の花が咲く頃に。
テレビの音が鳴っている。その場の大勢が、黙ってそれを見ていた。部屋の隅では父と母が、スーツの人と何かを話している。
少し光る机に肘をついて、スマホの画面を眺める。
「やっぱ充電器持ってこればよかったな」
父と母の間に割って入り込み、充電器を借りる。話を遮るなと母に怒られたが、そんなお説教より、こっちの方が僕にとっては大事だ。
テレビの対角線上にあるコンセントに充電器を指す。携帯が熱い。構わず写真フォルダを開いた。
夢中になって動画を見ていると、白髪の整ったおじさんが、部屋に声をかけに来た。ご飯の準備ができたみたいだ。親戚の子供は、ご馳走だとはしゃぎ、先程まで手に持っていたゲーム機を投げ出して部屋を出た。僕もその後を追う。
会場は広く、白いテーブルには美味しそうな和食が並んでいる。揚げ物がいっぱいだ。初めて見る瓶のジュースを見て、胸の奥が少し動いた気がした。
妹もきっとはしゃいでいるだろう。他の人に取られないように、あいつの大好物だけを取って、別皿に分けてやる。父と母は、そんな僕を見て
「もうすっかりお兄ちゃんね」
なんて父と母が鼻をすすっている。
僕も大好きなオレンジュースの瓶を取って、蓋を開ける。あかない。栓抜きがいるみたいだ。あたふたしていたら叔父さんが手伝ってくれた。怖い顔だけど、何も言わずに栓を抜いてくれる。
何とか紙コップにこぼさず注ぐ。オレンジュースは、光が当たってツヤツヤしている。
沢山盛り付けたおさらと紙コップを、でっかい妹の写真の前に置く。嬉しいだろ。
花は、すごくきれいだった。
蕾の花が咲く頃に。 白川 優雨 (しらかわ ゆう) @Syafukasu
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