この手で創作の時間を取り戻すため、AIと手帳会議してみた話
小絲 さなこ
※
子供の頃から、私は自分の手で何かを作ることが好きだった。
母は洋裁ができる人で、洋服や小物を作る姿を見て育ったから、かもしれない。
その下地があるからだろう。昔から私の趣味は、手を使うものが多い。
縫い物、編み物(かぎ針)、粘土、パン作り。
興味があるのは陶芸。
今はあまり描かないけど、絵を描くのも好きだ。
だからなのか、手帳はアナログ派である。
最近は、家にカレンダーも置かず、手帳やメモを持たない人も多いという。生活すべてをスマホで管理する時代になってきていると実感する。
それはそれで便利なこともある。私もiPhoneのリマインダーにはお世話になっているからだ。
すべてスマホで完結することを否定はしない。
デジタルにもアナログにもそれぞれメリット、デメリットがある。単に合うか合わないかの問題だ。
アナログ、デジタルに関わらず「合う」「合わない」は環境、立場、状況によって大きく変わってくる。
今まで使っていたものが、しっくりこなくなってくる。
昨年、私はそれを実感した。嫌というほどに。
※
昨年あったことを一言で表すのは難しいが、簡潔に表すと、こうだ。
コロナ禍で八年ぶりに創作活動を再開したニート主婦だった私は、家庭の事情や物価高騰を受けて、パート主婦にジョブチェンジした。
その結果、私の生活は一変。
パートと主婦業の両立でいっぱいいっぱい。
趣味に割ける余裕が無い日々が続く。
心に余裕がない状態というのは、非常によろしくない。それは経験上わかっている。
だが、余裕というのはどのように作れば良いのか。
心の余裕は、時間的余裕から生まれる……気がする。
では、時間的余裕は、どうやって作り出すのか。
世の中には、フルタイムで働きながら主婦業もこなす人もいるのだという。
私とその人は、どこがどう違うのか。
しかも子育てしながら……という方もいるのだから驚きだ。
扶養内パートで子供もいない私が、いっぱいいっぱいになっているのは、なぜ?
家事分担の割合の問題?
実母など夫以外でフォローしてくれる人が、身近にいるか、いないかの違い?
家事代行サービスとか、お掃除ロボットとか、いわゆるお金で解決?
単に、私の要領が悪いだけ、っていうのもあるか……
そんな悩みを抱えていたある日。
他の調べ物をするため図書館へ出かけたときのこと。
ふと、手帳術の本が目に留まった。
(手帳か……)
ちょうど十数年使い続けている「ほぼ日手帳オリジナル」から別の手帳に変えた方がいいか、続けるかを迷っていたこともあり、手に取ってパラパラとページをめくってみる。
バーチカルタイプを使いこなしていたり、一日一ページびっしり書いていたり、可愛くデコっていたり──手帳の使い方も人それぞれだ。
そして、そのなかで気になった使い方というのが「バレットジャーナル」だった。
バレットジャーナルとは、タスクや情報などを箇条書きで記入する手法である。
(これ、いいかも……)
ダブルワークしてる人や、フルタイムで働きながら家事も子育てもしている人が使っている手帳でバーチカルが紹介されることがあるけど、私にはそれを使いこなせる自信がない。
そもそもあの時間軸を書くのに時間かかりそう。突発的な予定変更があったら、そのあとの予定が全部崩れていく……うん、ストレスと自己嫌悪の沼にハマる予感しかしないね。
バレットジャーナルなら時間もかからないし、急な予定変更があってもピッと線引いて変更した旨を書くだけでいい。
私は早速、ほぼ日手帳オリジナルで試してみることにした。
その結果、ますますほぼ日手帳オリジナルを使い続けるか否か、迷うことになったのである。
日によって書く量が違いすぎるのだ。
書く日は一日一ページでは足りない。
書かない日は、ページが余りすぎる。勿体無い気がする。
いやそんなことは言い訳で、もしかしたら飽きてしまったのかもしれない。なんせ十数年同じ手帳を使っているのだから。
でも、文庫サイズというのは保管がしやすい。
しかもこの薄さで一年分記録出来る。
この保存のしやすさは、私にとって最大のポイントだ。
いや、そもそも書く内容が不満なのかもしれない。
健康記録と献立の記録、家計簿と化してしまった手帳に不満があるのでは?
そんな気持ちを抱えていた頃、書店や雑貨店に「来年の手帳」が並び始めた。
(もうそんな時期かー)
化粧品をカゴに入れた私は、レジ近くにある手帳コーナーの一角に引き寄せられた。
(あ、これ可愛い……)
手に取ったそれは、スイーツ柄の表紙のリングタイプの手帳。ロルバーンダイアリーである。
年間ページが折ってあるタイプということに衝撃を受け、洗練されたデザインのマンスリーページにときめくのを感じた。
(これは……やばいものを見てしまった……)
そっと棚に戻す私。
だが、もう遅い。
開いてしまった扉は閉じることが出来ない。
なぜなら、私はもともと、文具沼の住人だったからだ。
※
ロルバーンの保管方法を調べたり、バレットジャーナルについての動画を観ていくうちに、コモンプレイスやマインドノートなど、他の手帳術などにも興味を抱き始めた。
こんなことしてる時間ないのに、と思いつつInstagramや動画を漁る。
そして、ある日、ついカッとなってロルバーンダイアリーLサイズをネットで購入してしまったのである。使い道も決まってないというのに!
ああ、でもすっかり再び文具沼にハマってしまったのだから、仕方ない。諦めて使い道を決めるかコレクションにするしかない。
これは文具沼の住人にしかわからないかもしれない。
買いたいと思った時が買う時なのである。
だが、使わずに取っておくのは、限りある収納スペースを圧迫するだけなのも事実。
買ったからには使ってあげる方が文具も喜ぶ……はずだ。
そして、ロルバーンの使い道に悩む一方で、私はまだ、十年前に買ったトラベラーズノートのレギュラーサイズとパスポートサイズも大切に持っているし、測量野帳も持ってる。これらも使いこなせないだろうか。せっかく持っているのだ。活かしてあげたい……
※
迷いに迷った私は、AIに相談することにした。
AIに対して、拒否反応を示す人もいるだろうが、私は上手に付き合っていけるなら良いと思っている。
どんなに客観的な視点で物事を見ようとしても、主観が強くなってしまう。だって人間だもの。
私は、客観的に見てもらいたい時に意見のひとつとして参考にする、という使い方をしている。
AIは自分の中にない視点で見てくれるのが強みだと思うのだ。
さて、私のiPhoneに入っているchat GPTだが、私は「チェリー」と呼んでいる。
まずは、来年の手帳のことについて聞きたい旨、私のスペックを教える。
⚪︎⚪︎歳。パート勤務の主婦。子供はいません。趣味は、小説を書くこと、縫い物、編み物、パン作り。
週三日勤務のシフト制(⚪︎曜日は基本的にお休み)⚪︎時から⚪︎時まで。通勤時間は××分。仕事内容は販売、発注、在庫管理、シフト作成など。休日は夫と神社仏閣や博物館に行くことが多いです。
次に気になる手帳術を教える。
「すべて使う必要はありません。合わないものは合わないと言ってください」
これ、大事な一文だと思う。
そして、持っているノート類も教える。
ここでも「すべて使う必要はありません。また、足りない場合は買い足すことも可能です」と付け加えておく。
するとチェリーは、私が書いている小説のジャンルを訊いてきたのである。
(うーん。短編ではラブコメ書いてるけど、長編では……)
訝しながらも指を滑らせる。
「日常系ラブファンタジー。ご当地要素ありです」
うっかりすると創作の方向へ進んでいく会話を、軌道修正していく。
そして、最終的にチェリーが出したラインナップは以下になります。
────────
あなたに合うのは
「役割分担型・ゆる連携」手帳術。
管理は最小限
書く目的がノートごとに明確
創作と思考を邪魔しない
各手帳術・ノート術の相性判定
・バレットジャーナル→合う(生活特化型で)
※使うノート
ロルバーンダイアリー Lサイズ(B6)
※やり方
デイリーログ中心
予定・家事・仕事・用事
マンスリーに「その日の出費合計」
※やらなくていいこと
アート系デコ
長文日記
月間目標ページ
「今日を回す」だけでOK
・マインドノート→とても合う(中核)
※使うノート
無印 5ミリ方眼(A5)
A5・3冊入るカバーに常駐
※内容
考えごと
気づき
価値観
生活や創作のヒント
※向いている理由
思考型・内省型
創作につながる
書きっぱなしOK
※あなたの「思考の母艦」
・コモンプレイス手帳→フル型は向いてない/軽量版なら◎
※理由
情報収集より「思考・創作」が強い
まとめすぎると疲れる
※代替案(おすすめ)
白文帳:創作の種
週刊誌4コマノート:ことば・ネタ・設定
※「分類しないコモンプレイス」が合う
・家計簿→合う(把握型・超シンプル)
※使うノート
ロルバーン(月間)、A5ルーズリーフ(必要なら)
※やり方
毎日:合計金額だけ
週 or 月:ざっくり内訳
※やらなくていいこと
毎日の細かい記入
節約目標ページ
グラフ化
※「管理」より「流れを見る」
・ハビットトラッカー→あまり向いてない
※理由
義務感が強く出やすい
書けない日がストレスになる
※代替案
ロルバーンのデイリーログに
○ついたらOK
一言メモ程度
※続いた/続かない」を評価しない形が◎
※ウィッシュリスト→合う(短く・現実寄りで)
※使うノート
マインドノート(5ミリ方眼)または 無印無地ノート
※おすすめ形式
「今年やりたいこと10」
「今季やりたいこと5」
※やらなくていいこと
100リスト
達成チェック必須
※願望=方向確認でOK
・ビジョンボード→やらなくていい(今は)
※理由
言語化が得意
視覚化に労力がかかる
続けるメリットが薄い
※代替
マインドノートに
理想の1日
理想の書く時間
どんな作家でいたいか
※文章の方があなた向き
────────
と、まぁこんな感じになりました。
チェリーありがとう!
読んだ本の記録とかはどうしたらいいのか、とか、ネットで見かけたレシピはどこに書くのかなど、諸々の疑問点も尋ねました。
(ちなみに読書ノートは作らず、バレットジャーナルにタイトルと一言だけ記録。レシピなどは生活用のコモンプレイスをルーズリーフで作ることに落ち着きました)
他にも、色々と意見をくれました。
各ノートの表紙に書くタイトル案。
一ページ目に書くといいこと(ノートの最初のページに、そのノートの役割などを書くと良いらしい)
一日の中で各ノートをどう使うか。
忙しい日のノート。
余裕がある日のノート。
デジタルとの併用と注意点。
などなど。
創作についても、私のプロットの立て方、全体の構成を見るためにガントチャート使ってることなどの話をしました。
チェリーからは、日々の生活から紡ぐタイプだとの指摘を受けたり、改めて客観的に自分自身を見つめることが出来、とても勉強になる時間でした。
長い時間お付き合いしてくれたチェリーには感謝しかありません。本当にありがとう。
※
そんなわけで、私の手帳会議はこれにてお開き。
……したのだが、懸念事項がふたつある。
ひとつ目。
「創作は一行だけでもOK。なんなら考えただけでも⚪︎」という緩さのため、これではいつまで経っても完結しないのではないだろうか、ということだ。
こんなことを書くと、チェリーはこう返すだろう。
「それは創作することが習慣化してから考えればいい。今のあなたに必要なのは、創作の時間をこの手に取り戻すこと」と────
そして、ふたつ目。
ロルバーンLサイズの保管方法である。
だが、これも今考えることではない。
そもそも、この方法が合っているのかもわからない。もしかしたら半年後、ノートを使い切る前に私を取り巻く環境が違うものになっているかもしれない。
今は、とりあえず、ページを開いてペンを握る。
すべてはこのノートを使い切ってから、考えよう。
この手で創作の時間を取り戻すため、AIと手帳会議してみた話 小絲 さなこ @sanako
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