第3話 憂鬱な合コンでの出会い~浩平side~
「お前がいると、女子ウケいいんだよ。頼むよ~」
職場の先輩から合コンに誘われているが、正直行きたくはない。
しかし、今日の夜は予定がないと言ってしまった手前、断りづらい。
これまで、誘われても理由をつけて断っていたが、今回はしょうがなく参加することにした。
「今回だけですよ。僕、ああいう場所苦手で」
そう先輩に伝えて、終業後に一緒に居酒屋に向かった。
浩平は、女性経験が乏しいわけではない。
むしろ、高身長に整った顔立ちから、高校生のころから現在に至るまでモテてきた。
しかし、合コンには期待はしていない。
これまでの経験から、外見で好意を持たれても、その後が続かなかったのだ。
素の自分を見てくれる人は誰もいない。
外見がよくたって、中身をさらけ出しあって付き合えなければ何の意味もない。
浩平は、そう思うようになっていた。
お店につくと、まだ女性陣は着いていなかった。
なるべく目立たないように過ごそうと、壁側の席にそそくさと座った。
しばらくして、女性陣が到着した。
可愛らしい洋服で身なりを整え、キラキラとしたアクセサリーやメイクで着飾っている。
行動や話し方も、普段とは違うよそ行き用なのだろう。
この光景を見ると、浩平は毎回憂鬱になる。
また始まった…。
しかし、1人だけ雰囲気の違う女性がいることに気が付いた。
まるで自分を見ているかのようだった。
端の席に座り、この場の空気と化そうとしている女性。
そんな彼女を見て、浩平の胸が少し踊った。
自分と同じような彼女を見て面白かったのもあるが、それだけではない。
俄然興味がわいた。
自己紹介では、
「理沙です。この子たちの先輩で、年齢は秘密です」
しーっ、と顔の前で人差し指を出して冗談っぽく笑う姿が可愛らしいと思った。
あえて年上アピールをして、自分を恋愛対象にさせないようにしているのだろう。
しかし、場の雰囲気を壊さず、それを気づかせないようにしている。
この人、絶対に人当たりがよくて優しい人だ。
すぐにそう感じた。
「浩平くん、身長高いね。手もおっきい~♡」
「酔っぱらっちゃったかもぉ~♡」
合コンも中盤になると、色々な意味で盛り上がってくる。
いい加減にしてくれ…。
周りの女性陣に、手を触られ肩に寄りかかられ、散々な目にあっていたがようやく振り払うことができた。
周囲は最初の席がどこか分からないほど入れ替わり、楽しそうにやっている。
そして、理沙の隣が空いていることに気が付いた。
浩平は、今がチャンスとばかりにすかさず隣に座る。
理沙は、ぼーっとしていてそれに気が付いていない。
合コンという場で完全に気を抜いている姿がおかしくて、思わず笑ってしまう。
「理沙さんは、こういう場所苦手ですか?」
と声をかけるが聞こえていない。
どれだけ自分の世界に入っているんだ。
面白い人だ、と改めて興味がわいた。
もう一度、今度は顔を近づけて声をかける。
「理沙さん」
その瞬間、理沙はハッとしてようやく自分の世界から抜け出した。
「ごめんね、ぼーっとしてて聞いてなかった」
申し訳なさそうに返事をする。
「こういう場、苦手じゃないですか?」
浩平が聞くと、苦手というより頑張る年齢ではないと割り切っていることを、少し寂しそうな顔をのぞかせ話してくれた。
理沙は素敵な女性だと思う。
それなのに、なぜこんなにも自信を失ってしまったのだろう。
周囲への気遣いや優しさ、
自分を必要以上によく見せようとしないところ、
うわべだけじゃない言葉。
出会ってからほんの1時間ほどで、それは十分過ぎるほどに伝わった。
そんな彼女に対して、もったいない気持ち、そして自分がどうにかできないかという気持ちが芽生えた。
しかしすぐに、出会ったばかりの自分がどうこうできる問題ではない、と冷静になった。
そろそろ終わりかな?
そんな頃合いに、理沙は隣でそそくさと荷物をまとめていた。
彼女はもう帰るらしい。
それを聞いて、浩平は少し焦った。
理沙はおそらく上手く抜け出すのだろうが、そうなればもう出会うことはないだろう。
少し気になる。
ただそれだけだったが、浩平はこの機会を逃したくはなかった。
そんな思いから、とっさに
「俺、もう限界です。あざと女子の圧が強くて。一緒に抜けさせてください」
と、半分本音、半分苦し紛れの言い訳が口から出た。
嘘っぽかっただろうかと心配になったが、理沙は可笑しそうな表情を浮かべながら了承してくれた。
「こういうのは、いかに気配を消すかが大事だから。今だけ、そのイケメンオーラは封印!」
理沙は、真剣な顔でそう言いながら、会計を終わらせている最中のガヤガヤしたなか、浩平を手招きしながら店を出た。
店を出てしばらく沈黙のまま歩き、もう大丈夫というところまで離れた後、2人は顔を見合わせた笑った。
「あはははは、はぁ~、おっかしい」
理沙は、気持ちいいぐらいに大笑いしていた。
その姿はとてもキラキラしていて、浩平には眩しかった。
そして、あのとき勇気を出して声をかけてよかった。
そう実感していた。
駅までの帰り道、どうしても聞きたかったこと。
「理沙さんは、恋愛を諦めてるんですか?」
これが最後になるぐらいなら、と思い切って聞いてみた。
「……諦めた、というか。期待しないようにしてる、が近いかな」
きっと今までいろいろなことがあったんだろう。
年齢や立場によっては、女性は生きづらくなってしまうから。
でも、諦めてほしくなかった。
それは、理沙のためだけでなく、自分のためでもある。
「それって、大人だと思います。でも…!」
「今日は、楽しかった」
浩平は、自分の思いを伝えようとしたが、理沙に遮られてしまった。
おそらく踏み込まれたくないのだろう。
自分の思いだけで、少し出しゃばりすぎてしまった。
浩平はそう反省し、理沙は自分との今後を望んでいないのだと感じた。
駅前に着き、ガヤガヤと周りがうるさくなるのも浩平には聞こえていなかった。
想像以上にショックだった。
もうこれ以上踏み込んでも、近づくことはできないのだろうか?
隠しきれない名残惜しさでいっぱいだった。
しかし、理沙のほうから
「連絡先、交換します…か?」
と迷うように声をかけられた。
「いいんですか?」
この先はないのだと思っていた落胆から、一気に笑みがこぼれたが、それを隠す余裕もなかった。
もう一度会える。
それだけで、浩平の心は浮かれていた。
「じゃあ。今度は、合コンじゃない場所で」
嬉しさのあまり、大声で手を振りながら叫んでしまう。
今日はいい日だ。
仕事中に合コンに誘われたときとは打って変わって、浩平は清々しい表情を浮かべていた。
「今度」はいつ来るだろう。
静かにその次の機会を待つつもりはない。
浩平はそう心に決め、今夜の余韻に浸った。
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2026年1月22日 10:00 毎日 10:00
合コンで出会った年下男子は恋愛あきらめ女子に恋をする みなみ なみ @minami-n
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