第5話(最終話):銀の枷を抱きしめて
歌舞伎町のビルの隙間、雨雲のさらに上。
ネオンの届かない場所から、誰かがこの街を見下ろしている。
今、私はこの騒がしい地上を離れ、夜明けが一番最初に生まれる場所へ帰ろう。
そこは雨も、未読の通知も、誰かのついた嘘も届かない、永遠に澄み渡った大気の入り江。私は星々の合間を縫い、真珠色の霧となって天空へと溶けていく。
銀色の迷宮は、今夜も迷える魂を飲み込んでは吐き出している。
魔術師の囁きは影に消え、水の精のモップは夜明けとともに去るだろう。
けれど、沙織(レディ)は、自分の足で冷たい雨の中を歩き出した。
もしも君が、同じような暗い森で道を見失ったなら、どうか思い出してほしい。
美徳を愛するがいい。
この地上で、自分自身を自由にする翼は、それ以外にないのだから。
たとえ天が崩れ落ち、頭上の空が堕ちてくるような絶望が訪れたとしても、その高潔な意志だけは君を見捨てない。
それは君をどこまでも高く引き上げ、星よりも高い場所へと連れて行くだろう。
さあ、私の役目は終わった。
愛するがいい、本当の自由を。
地上の重力を引き受け、泥の中を一歩ずつ歩く者だけが、いつかこの天の極みまで、高く、高く、飛べるのだから。
(了)
銀の枷(かせ) 枕川うたた @makurakawautata
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