俺と、助手と、茶トラはときどき

常葉実弘

第1話

 本と読者は巡り合わせ。それが俺の信念で、生き方とも言える。人間関係より、見栄より、うまい儲け話より、物語との絆を俺は優先する。だが、何万人が涙した作品だとか、実写映画化だとか、有名作家の最高傑作だとかいう売り出しには興味はない。俺は本屋に行き、目的もなく本棚の間を歩き、ふと、目に留まる本の前で足を止める。引き寄せられるように手を伸ばし、タイトル、裏面のあらすじを確認して、この本が欲しいと心が思ったとき、それが読者の俺と本との巡り合わせだ。それは、一目惚れに近い衝動だ。

 そんな俺は、小学生の頃から作家になることを夢見てた。だが、現実はそんなに甘くはない。作家という職業で食っていけるほどの腕は俺には無い。極めつけは、俺が生まれたのがAI様様の現代だったってこと。日々進化していく科学技術を日常の身近なところで実感している。ニュースのコメンテーターはそれでも「人間にしかできないことがありますから」なんて簡単に言うが、俺らの創造性が及ぶ時間的限界を遥かに上回るスピードで大量の物語を書く化け物がいるのは事実だ。

 そうだと言うのになぜ俺は今、小説を書いているのだろう。

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俺と、助手と、茶トラはときどき 常葉実弘 @mitsurutokiha

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