このままずっと手の中で生きていく拷問

エリー.ファー

このままずっと手の中で生きていく拷問

 愛してる。

 本当に、この手で、君を愛している。

 君の爪と指が枯れても。

 僕は君を愛してる。

 昨日、君の右の眼球を食べたんだ。

 本当だよ。

 嘘じゃない。

 愛故さ。

 だからね。

 だからさ。

 僕の爪が、指が、君の首を貫いても怒らないでね。

 君が起こっている時の顔が嫌いなんだ。

 お願いだから。

 お願いだから、僕を責めないでね。

 僕にとって、ここで生まれた世界だけが本物で。

 君が作り出す世界に、僕の居場所はないんだ。

 車の中で遊んだことも忘れてしまいたい。

 大人になって消えてしまいたい。

 本当は、君のことが大好きだって伝わるといいな。

 なんでもかんでも、僕のせいにしても変わらないよ。

 これは愛なんだ。

 恋じゃないよ。

 愛なんだよ。

 世界が生み出されて、世界が壊れて、自分を海に投げて。

 それでも戻って来てしまって。

 それを繰り返していくうちに、君への愛を取り戻して。

 僕という一人称が、俺や私やあたしに変わって。

 気が付けば波間に、君がいて。

 僕は君の手を繋ごうとして泳ぐんだけれど。

 気が付くと、君の前歯をへし折っている。

 何度も何度も殴っている。

 前歯は、もうどこにもなくて。

 頬骨が陥没しても止まらない拳の雨。

 もちろん、殴っているのは僕。

 でも、僕がその拳の雨を浴びているような気分になる。

 不思議だろ。

 だからさ。

 僕は、自分のことを罰しているんだよね。

 君を使って、自分に罰を与えているんだ。

 ね。

 この意味が分かるだろ。

 だから、僕は無罪なんだ。

 無実なんだよ。

 だって、ちゃんと罰を受けてるから。

 殴る時に、自分をちゃんと嫌いになっているから、この場合はノーカウントになるんだ。

 だって、そうだろう。

 そういうものだろう。

 そうやって、司法はできあがっていったんだろう。

 僕は、僕を救いに来たんだ。

 君を愛することで、僕を愛そうとしたんだ。

 そして。

 できた。

 だって、僕は君を愛してる。

 君の腕を切断してしまったけれど。

 その腕を少しだけ食べて吐いてしまったけれど。

 でも。

 癖があるけど、美味しいなって、本当に思ったから。

 これは、お決まりのノーカウントのやつになるんだ。

 そういうルールというか、そういう真理というか、そういうものとして生きているからさ。

 こっちは、本物の愛を知っていて君に教育をしているんだ。

 分かるだろう。

 だって、知らないまま死んだら。

 愛じゃないだろう。

 死んでも愛して続いていく。

 気が付けば、生き返らせることだってできる愛の積み上げ。

 それが、真実であって。

 心だろう。

 人間の心の在処を証明するためにも愛は必要で。

 伝えるための手段を探している内に、死んでしまわないように魔法を使い続ける宿命と戦う。

 そう。

 それが僕であって、僕たちであって、僕も含んだ人類の夢じゃないか。

「もう、やめて」

 愛を語るために、打消しの言葉が羅列された時、正体を見失ってこそ始まる物語には自分が存在しないことが最も重要であると伝えたはずだ。感情論だけでは説明がつかないけれど、実情から生み出された根底には過去から語り継がれて来た精神分析学の素地が必要になる。回答と解答の違いから導き出される、囲うことによって社会的な立ち位置を確保する生き方が、僕たちを肯定してくれるのだと信じてやまない宗教的かつ儀式的な振る舞いには断固として戦わなければならず、心の中に住まわせた平和という名の悪魔との論理的な話し合いによってでしか朝日を視界に映すことはできない。

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