第2話 調律師と近接戦闘

「今回の依頼だが、大手物流会社クレーバー・フォールドの次期社長候補、三山悠斗。32歳、圧倒的なカリスマ性で次期社長はほぼ確実。

対して依頼人は“元”次期社長候補、陰里京介、55歳。三山がこの会社に就いてからは社内の支持者が減り、自分が次期社長になるために三山の暗殺を依頼してきたようだ」


株式会社クレーバー・フォールド

日本を代表する大手物流会社だ。

山本たちはそんな大手企業の裏側を覗いている。


「殺しを依頼しないでももっといい案があるだろ…その悪知恵クレーバーを使ってよ」


「競争相手なら、暗殺を依頼してでも勝って次期社長の座を狙いたいんだろう」


「ところで、三山ってやつを殺すときに拳銃チャカは使っていいのか?」


山本は今、得意の拳銃を使えない。

つまり、近接戦闘を強要されてしまう。

なぜ山本が近接戦闘を嫌うのか?

それは常人を遥かに超えた反射神経を得るために幼い頃から受けていた訓練の影響で彼は肌を触れられた際に本能的な死の危険を感じてしまうからだ。


「今回殺しをする場所はバスの車内だ、民間人を巻き込む可能性だってある。拳銃チャカは使うな。」


「なぜバスの車内…?もっと一人の時があるだろ?」


「社内は大勢の人目につく。

バス停も会社の目の前だ、人目につく。

そしてバスの車内。運が良ければターゲット一人と運転手だけになる」


ターゲット、三山の唯一1人になる可能性が高い場所、それはバスの車内だ。


「アドレナリンが出れば無敵の調律師になれるお前なら社内の近接戦闘もできるだろう?頼んだぞ」


「……わかった」



数時間後

三山がバスに乗車したことを確認した山本は、急いでバスに乗る、彼のバッグの中には目出し帽とナイフが入っていた。


バスに揺られ、数分後。


山本はバッグから目出し帽を取り出し、顔にかぶる。

視線は周囲を眺め、まるで演奏が始まる前の指揮者のようだ。

座席の間隔、吊り革の揺れ、通路の長さ、

そしてターゲット。



バスは詰まっていた信号から動き出す。

山本は席から立ち上がる。

目出し帽から唯一見える目は、ターゲットを睨んでいた。


──仕事の始まりだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

調律師と硝煙 神木わるふ @kamiki-waruhu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画