【カクヨムコン11短編】運命線あっぷでーと!

尾岡れき@猫部

運命線あっぷでーと!



 成人式。はなやかで、おめでたいはずなのに。やけに取り残された気がするのは、どうしてなんだろう――。

 等間隔の距離を空けて歩く君を見やり。なおさら、虚しさがこみあげる。





■■■





 別に、なんてことはない――そう思うのに。

 今まで、どれだけの時間を過ごしたんだろう。


 横を歩くアイツを見る。

 こっちが意識しすぎなんだろう。


 ちょっとした瞬間タイミングで距離を詰めてくるのに。こっちは、いざって時にまるで行動ができず、時間だけが過ぎていく。



 振り袖、可愛かったよ。

 すげぇ、似合ってた。

 そう言葉にするれば良いだけなのに。

 言葉が思うように出なくて。今も口が渇いて――




 ――手相、見てあげるよ。

 そういえば、高校の時、そんなことを言っていたっけ。


 こっちが反応するより早く、手を掴んでくるから。本当に男として意識してくれないんだなって、つくづく思った。別にガキじゃないから。それぐらいでこっちも意識なんかしないけれど。


 それより、手相なんて読めたっけ? まずツッコムのは、ソコだよ。あの時の俺。


 ――ありゃぁ。結婚線と運命線、これは要注意だね。


 虫眼鏡で何度も見ながら、君はそんなことを言う。君曰く、絶大な縁があるが、これを逃したらもう結婚できない、ということらしい。


 ――これはいけない。運命線にも影響をきたしているからね。あと、山手線。うん、君はこのタイミングを逃したら、電車の乗車もできなくなっちゃうね。


(そんな、アホな)


 本当に手相を読めたのかどうかも怪しいけれど。

 運命線があったとしても、相手がいない。


 勝手に片想いをしていた目の前の君は、テニス部のキャプテンにご執心。いや、あの時の女子はみんな、あのイケメンの虜で。結局、自分の気持ちを飲み込んだ俺だった。


 二年って時は、残酷だ。

 たった二年。


 大学でエンジョイした彼。美容整形でさらなる高みを目指したイケメン君は、どうしたことか。極端に左右差のある二重になってしまう。さらに手術にチャレンジをした彼は、堂々の失敗。腫れた目と、癒えない傷跡から人造人間フランケンなんて言われる始末。別に俺は気にしないけど、成人式は欠席してしまったのは、ちょっと残念だ。



 それは、そうと。

 君も本当に垢抜けた――。


 心の中でなら、いくらでも言えるのに。無意識に視線を向けたら――がっつり君と目が合った。




「……へ?」

「何か、言うことあるんじゃないの?」


「え、っと。久しぶり?」

「うん、久しぶり」


 うん、求められた答えはコレじゃない感。高校の時からそうだった。そして正解を言うまで、口を聞いてくれないのだ。そうこうしている間に、クラスメート達との距離がどんどん広がっていく。三次会の店、俺は知らないけど――。

 手を握られているの、どうして?


「あ、あの。振り袖可愛かった。今のワンピースも、本当に可愛いっ」

「コートの中を想像したの? なんかいやらしい」

「うぐっ」


 そうそう、君はそういうヤツだったよ。すぐ、そうやって憎まれ口を叩く。でも、だからこそ気兼ねなく過ごせたのも、また事実。


「あれほど、タイミングを逃すなって言ったのに」


 ぐいっと、手を掴まれた。


「……それは、て、手相の話?」

「そう。それ以外にある?」


「いや、だって。あの時はそんな相手いなかったし――って、痛い、痛い! 痛い!」


 なぜ、俺の手を全力で握りつぶそうとする。お前は、万力か!


「あの縁は逃すなって言ったじゃん。それなのに、大学に入学したら浮かれちゃってさ。ゼミの子と付き合ったものの、同じゼミのクソに寝取られて、今はフリー」

「お、お前っ! 言い方――」


 女子の情報網、すごいな?!

 でも、言い方が酷い。コイツを忘れたいから。そんな不純な想いで告白したけれど。実は双方、両片想い。噛ませ犬は俺だったというだけの話。その後も、ゼミの中での関係は良好なの。だから、蒸し返さないで。


「あの手この手で、頑張ったけど。もう待つの、無理」

「……へ?」

「とりあえず、運命線をのばすから」

「はい?」


 俺が聞き返すより早く、君は俺の手のひらにマジックで、線を引く。


「ちょっと、何すんの?!」


 成人式の日にこれはない。


「うるさい、バカ! そこを動くなっ!」


 乱暴に、俺の顔にマジックで何やら書くの――晴れの日に、酷すぎない?





 ショーウィンドー越し。

 殴り書きされた字が飛び込んでくる。





 ――こいつはずっと片想いしていた女の子の気持ちに気付かない、鈍感クソヤローです!





 君は、涙目になりながら、僕を睨む。

 あ、あの。それって――。


 そういう意味?

 いや、だって。

 君はあのイケメン君のことが――。




「ヤキモチ妬いて欲しかったの。ちょっとでもそんあことを思った私がバカだったんだよ」


 ぎりっと、君が唇を噛む。







 ■■■






 手をのばす。

 君と運命をつなぎたい。


 街のネオンの明かり。痛いくらいに煌めく。溢れ出る、君の感情が乱反射する。

 俺は、もう迷ってなんかいられない。ただ、その手で拭う――。





 言い訳なんかいらない。

 君と運命をつなぎたい。

 ただ、それだけで良かったんだ。ようやく気付いた俺は、君に手をのばして――迷わず、引き寄せて。





 ――運命線をアップデートした。







【おしまい】





________________


作者より蛇足。

遅まきながら、新成人の皆様

おめでとうございます!


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