姫様クリスマス争奪『日めくりカレンダーゲーム』

さわみずのあん

決め手は、日めくりカレンダーゲーム。

 11月22日。いいふうふの日だからといったわけではなく。


「「「いっ! いっいっいっ! 一気! フウッフウッ!」」」

「「「いっ! いっいっいっ! 一気! フウッフウッ!」」」

「「「いっ! いっいっいっ! 一気! フウッフウッ!」」」


 ホストクラブΔVデルタボルタは、一人の女が貸し切っていた。

 姫とNo.1とNo.2の俺の、コールと手拍子。

 ヘルプに入っているNo.3が、一本100万円のシャンパンを飲み干す。


 No.3は朦朧とする意識のなか、自分の仕事をこなす。

「いっ! 姫からのおぅ! うっ! シャンパーンっ! いっっただっっっっ」


 ダーンッと顔面から。No.3は倒れた。姫は無邪気に、手を叩き、

「黒服ちゃ〜ん、黒服ちゃあ〜ん、」

「はっ、姫」


 姫に呼ばれた黒服は、No.3を引きずり、持ち上げ、投げ重ねる。

 No.3以下、No.10までが死体のように積み重なっている上に。


「きゃっ〜きゃっ! 見てみて、唯我ゆいが〜」

「さすが、姫。見事なシャンパンタワーです」


 シャンパンで酔い潰れた人間の塔。

 それを見、愉悦に浸る姫。シガレットケースから、タバコを一本咥える。

 すぐさまNo.2の俺がライターで火をつける。


「ふっーう。ありがと統夜とうや〜」

「俺の心に火をつけたのは、姫が先っすよ」

「ふー」


 姫が顔に煙を吹きつけても、俺は笑顔のまま。


「おい、統夜とうやスモークにはリシャールだろ」

「分かってますよ、唯我ゆいがさん、はい姫」


 酒の飲み過ぎではない。腸に煮え滾るものを吐かないよう。

 150万円のブランデー、ヘネシー・リシャールをグラスで作る。


「姫。どうぞ」

統夜とうや飲んで〜」

「では、いただきます」


 味なんて分からない。臓腑に落ちる黒い液体。

 夜の帷も深く深く。落ちていく。




「なあ、姫」

「な〜に〜? 唯我ゆいが〜ぁ」

「クリスマス。僕と統夜とうやのどちらと過ごすか決めたのかい?」

「それはあ〜。もちろお〜んっ。No.1んの方〜」

「じゃあ、俺ってことですね」

「あん? なんだぁ統夜ぁ。お前は、No.2じゃぁ」

「なに言ってんっすか、唯我さん。クリスマスイベント。本指名を得られた方が、No.1。一年間を通して、このΔVデルタボルタの、No.1っしょ。姫。姫がNo.1を選ぶんじゃない。姫が選んだ方が、No.1なんっすよ」

「ふっ、ペーペーの一年坊が。言うようになったなぁ統夜ぁ」


「きゃ〜。やめて〜。喧嘩しないで〜よぉ。姫のクリスマスは〜。確かに〜。大事だけど〜。せっかくの夜なんだよ〜。も〜う。黒服ちゃ〜ん」

「はっ、姫」

「げ〜む。ゲーム。ゲームで決めよ〜。黒服ちゃ〜ん。な〜んか〜あ〜、い〜いゲームな〜いのお」

「ふむ。そうですね。はい。このホストクラブΔVデルタボルタにて、私どもが姫と呼ぶのは姫だけ」

「そ〜うよそ〜。私は姫。姫の中の姫。私が一番〜お金持ち〜」

「ええ、我々一同。クリスマスイベント。姫様がお越しになられる日を心待ち申し上げております。カレンダーを見て、姫のクリスマス。その日が今か今かと。毎日毎日。姫のことを考える毎日でございます」

「おせじ〜。おやじ〜」


 姫が投げつけるタバコ。

 黒服は灰をこぼすことなく、タバコを静かに灰皿でキャッチする。

 灰皿をテーブルに置き、少し場を開ける。


 テーブルの上に出したのは、しなる紙束。

 姫とNo.1と俺は、目線を落とす。

 それは、日めくりカレンダー。


「私が提案いたしますゲームは、」

 カレンダーの日付は、11月22日。


「姫様クリスマス争奪『日めくりカレンダーゲーム』でございます」

「姫クリで〜、日めくり〜? おやじ〜」



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姫様クリスマス争奪『日めくりカレンダーゲーム』 さわみずのあん @sawamizunoann

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