続編は作者を殺す ~家出っ子ホームズ×法医学者ワタソン~

あろすてりっく

続編は作者を殺す

男性0、女性1、不問0。声劇台本として90分相当。

前作「観客は役者を殺す」を読んでいることが前提となります。

ホームズ:女性。18-20歳程度。帰る家がなく、ワタソンのもとに入り浸る。変装の天才。現在はJKに扮している

ワタソン:性別不問。年齢は20代後半以降で自由にしてよい

     大学で働く法医学者。独身


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  ――季節は晩春〜初夏。走行中のバスの中。車窓を若葉が走り去る。

  ――ワタソンはイヤーカフ型のワイヤレスイヤホンをつけて窓の外を見ている。

  ――ホームズは本を読んでいる。

ホームズ  「あー、つまんないつまんないつまんない!」

ワタソン  「バスの中くらい静かにっ。ほら、グミあげるから……」

ホームズ  「あーん(モグモグ)だって、つまんないんだもん。ワタソン先生オススメの歴史小説(クチャクチャ)」

ワタソン  「それはホームズの感性がおかしい。CD先生の歴史小説は一級品だ。俳優Aさんだって言っていた」

ホームズ  「半年前に死んだ人じゃん」

ワタソン  「この新作が読めなくてかわいそうに……」

ホームズ  「(モグゴクリ)展開がわかりきってるものを読んで、何が面白いのさ」

ワタソン  「歴史的事実の再解釈が面白いんじゃないか。音楽だってそうだ。奏者によって解釈が違う」

ホームズ  「音楽は違うじゃん。楽譜通りだったらどんな思いを込めても怒られない……で、何聞いてるの?」

ワタソン  「『ユグノー教徒』」

ホームズ  「音質はどう?」

ワタソン  「思ったよりは悪くない。まぁ、ほかの2組と比べると不満もあるけど、コイツには捨てがたい魅力もある」

ホームズ  「魅力」

ワタソン  「君の話を聞き流しながら、オペラが聴けるとかね」

ホームズ  「っなんでさ!」

ワタソン  「ウソウソ。はい、あーん」

ホームズ  「あーん(モグモグ)

ワタソン  「それに、ちょっとした耳飾りみたいで気にいってる」

ホームズ  「たしかに(ゴクリ)……話を戻すけどさ」

ワタソン  「うんうん、白いオコジョがなんだって?」

ホームズ  「オペラの歌詞じゃんっ! 歴史小説の話」

ワタソン  「そうだった。再解釈が面白いという話」

ホームズ  「……例えば、歴史の縛りナシなら面白いとおもうよ?」

ワタソン  「それは歴史小説じゃないでしょ」

ホームズ  「でも、後で歴史と違うと、小説は『間違い』になっちゃうじゃん?」

ワタソン  「私は気にしないけど……」

ホームズ  「でも、批判する人も多い」

ワタソン  「……まぁ、うん」

ホームズ  「……もう一個ちょうだい」

ワタソン  「はい、あーん」

ホームズ  「あーん(モグモグ)そもそも僕は公式がキラいなんだよねぇ。続編とか出すならなおさら(ゴクリ)」

ワタソン  「素晴らしいことじゃないか……何が君の気に障るんだい?」

ホームズ  「1作目は勝手にしたらいいよ? 面白ければ評価されるし、つまんなかったら無視される」

ワタソン  「まぁ、そうだな」

ホームズ  「でも、2作目以降はちがうよ。

      「世に出た作品をどう読むかは受け取り手の自由。1作目で閉じられなかった風呂敷は、読者がどう畳んでもいいはずなんだ」

ワタソン  (小声で)(……お、これは?)

ホームズ  「なのにさ、続編なんて出たら、僕らの妄想は否定されてく。公式が勝手に言ってるだけなのに」

ワタソン  (あーやっぱり過激派だ)

ホームズ  「だから僕は声を高らかにしていいたい」


ホームズ  『続編は作者を殺す』

ホームズ  「だから僕は推理なんてしないよ」


  ――バス停「那智山」にて、バスを降りつつ

ホームズ  「うわー空気おいしー」

ワタソン  (深呼吸して)「そうだな……」

ホームズ  「ねぇ、せっかくだからさ、そろそろ帰らない? もう疲れて疲れてたまらないっ!」

ワタソン  「元気な声で疲労を告げるな」

ワタソン  「はぁ……ここからまだ歩くっていうのに、先が思いやられる……」

ホームズ  「ロープウェイとかないの?」

ワタソン  「滝までだから、我慢してくれ……」

ホームズ  「滝? 何の滝?」

ワタソン  「ここまで来たら、滝は一種類しかない。那智の滝だよ」

ホームズ  「ドイツ語っぽい響きだねwww」

ワタソン  「それ以上はいけない」

ホームズ  「ねぇ、こんなところに来て何がしたいのさ~、も~帰ろうよ~!」

ワタソン  「頼むから静かにしてくれ……周囲の目が痛い……」

ホームズ  「ヤダ!」

ワタソン  「そこまで駄々(だだ)こねるなら小学生にでも変装してきてごらん」

ホームズ  「ポリシーに反するっ」

ワタソン  「信念をもって変装するな……」

ホームズ  「那智の滝を見に来る小学生も少し変でしょ?」

ワタソン  「そうでもないと思うけどな……ほら、君ぐらいの年齢層も多い」

ホームズ  「どうしてだろうね」

ワタソン  「聖地巡礼じゃないかな? 君の思想に乗っかるのは癪(しゃく)だが、『那智の滝の向こうへ』はCD先生のデビュー作なだけあって、各年齢層に狂信的なファンがいる」

ホームズ  「へぇー」

ワタソン  「ほんと、どんな方なんだろうね! 実は、あの人だったりして」

ホームズ  「興味ない」

ワタソン  「……ん? あの人、ホームズの、前の変装とそっくりじゃない?」

ホームズ  「え、どこ?」

ワタソン  「ちょうど角曲がっちゃった」

ホームズ  「ザンネン、見逃した……」


ホームズ  「で、何? せっかくのゴールデンウィークに、僕は聖地巡礼に付き合わされているわけ?」

ワタソン  「はぁ、あきれた、目的はもうさんざん説明しただろう」

ホームズ  「忘れた」

ワタソン  「……なぁ、ホームズ。今日はやけに非協力的じゃないか?」

ホームズ  「さすがに気づいた?」

ワタソン  「気づくさ。せめて、どうしてか教えてくれないか?」

ホームズ  「……

      「……水が……怖いんだ……」

ワタソン  「そうだったのか……」

ホームズ  「うん……」

ワタソン  「……あの時は気が付かなかったな」

ホームズ  「……うん

      「顔が濡れると、力が出せないんだ」

ワタソン  「あぁ…………ん?」

ホームズ  「ん?」

ワタソン  「頭につぶあんでも詰まってるのか」

ホームズ  「灰色のつぶあんだよ~」

ワタソン  「なんだそれ」

ホームズ  「……ポアロパンマン」

ワタソン  「……」

ホームズ  「……蛇足(だそく)だった」

ワタソン  「君が続編を嫌う理由が分かった気がする」

ホームズ  「……いっそ殺してくれ」


ワタソン  「……どうしても行きたくないなら、私一人で行くけど?」

ホームズ  「ついてく……」

ワタソン  「おとなしくなったな……。じゃあ、岩場でも滑らないよう気をつけてくれ」

ホームズ  「岩場で『も』?」

ワタソン  「あぁ、君がさっきスベったこととかけたつもり」

ホームズ  「……」


ホームズ  『続編は作者を殺す』

ワタソン  「……忘れてくれ」


  ――那智の滝にて

ホームズ  「ぼ…ぉ……な……で……ね」(訳:ぼくのかおは、みないでね)

ワタソン  「滝の音にかき消されて、聞こえない!」

ホームズ  「じゃあ、いい!」

ワタソン  「ついでに、君が言っていた意味が分かったよ!」

ホームズ  「どういうこと!」

ワタソン  「水が苦手な理由さ! やっとホームズの弱点が知れたよ……!」

ホームズ  「チッ!!!」

ワタソン  「うるっさい!」

ホームズ  「僕の顔は見ないでね、って言ったじゃん!」

ワタソン  「それは私に聞こえなかったことになってる!」

ホームズ  「聞こえてるじゃん! ねぇ、滝から離れない!?」

ワタソン  「同意だ!」


  ――滝から離れる

ワタソン  「いやぁしかし、まさか変装の達人様でさえ、人間の肌を完全に再現できないとはなぁ

      「水滴の付き方がまるで変だ! ハハハッ!」

ホームズ  「ムーッ!」

ワタソン  「ハハッ……! いやぁ、すまない

      「うん、真珠みたいできれいだったよ……まるで肌になじまないどころか……w

      「……メイクが浮いてww……ホントwww……ムリィwww……ブハハハハッ!」

ホームズ  「……もう……僕にだって限界はあるよ……」

ワタソン  (息を整え)「……そうだな?w」

ホームズ  「草をはやすなぁ~」

ワタソン  「もう初夏だしなぁw」

ホームズ  「……法医学だってわからないことは多いでしょ?」

ワタソン  「うっ……それを言われると苦しいな……

      「……正直、多すぎて手を焼いてる」

ホームズ  「んー、今回は何か分かりそ?」

ワタソン  「自信はない。時間の経った遺体からわかることは限られている」

ホームズ  「ムリそだね~」

ワタソン  「……現場検証は今からなんだ。そんなこと言わないでくれ……」

ホームズ  「えーっと、こっちだっけ?」

ワタソン  「まて!この方向音痴……このトラロープが見えないのか……」

ホームズ  「へ~これ、トラロープっていうんだぁ~。黄色と黒のシマシマだから?」

ワタソン  「だろうね……ほら、さっさと来て」

ホームズ  「もう足上がらないよ~! 力が入んな~い」

ワタソン  「もう顔は乾いただろ……」


  ――お食事処にて

ホームズ  「いっただっきまーすっ!」

ワタソン  「あぁ……」

ホームズ  「先生、本当にコーヒーだけでいいの? 唐揚げ一個あげようか?」

ワタソン  「いらない」

ホームズ  「熊野地鶏なのに……」

ワタソン  「気持ちは嬉しい。ただ、今は事件に集中したい」

ホームズ  「糖分は脳細胞の燃料だよ?」

ワタソン  「正直言うと、のどを通らないんだ」

ホームズ  「(モグモグ)変なのー(ガブガブ)」

ワタソン  「……ホームズはあの遺体を見て、どう思った……」

ホームズ  「ちょっとぉ……食事中っ! ほかのお客さんもいるんだよ?」

ワタソン  「あぁ、すまない」

ホームズ  (ムシャムシャ)

ワタソン  (……ズズッ)

ホームズ  (ゴクゴグ)(ガブリ)

ワタソン  「……」


  ――以降、小声

  ――ホームズは自由に食事を食べていてよい


ホームズ  「……小声ならいいよ……」

ワタソン  「いいのか?」

ホームズ  「僕は気にしない」

ワタソン  「そうか……すまないな……」

ホームズ  「先生は何が分かったの?」

ワタソン  「あぁ、そうだな」

ワタソン  「……まず、身元の証明は無理だ。性別すらわからない」

ホームズ  「もう骸骨(がいこつ)だったから?」

ワタソン  「白骨化遺体の中でも、頭と骨盤、あとは両腕の損傷が著(いちじる)しい

      「頭部に至っては完全欠損(かんぜんけっそん)に近い」

ホームズ  「頭がそんなに大事なの?」

ワタソン  「あぁ、特に歯が残ってないことは致命的だ。歯の治療痕やDNAが見れなくなった」

ホームズ  「そうなんだ。骨盤はなんで?」

ワタソン  「男女の区別は骨盤で行うからな」

ホームズ  「あとは?」

ワタソン  「落下死ではない。あの遺体は殺された」

ホームズ  「へぇー」


  ――小声、ここまで


ホームズ  「あ、黒糖まんじゅう下さい! 3つ!」

ワタソン  「ったくコイツ……高血糖に殺されるぞ」

ホームズ  (口にまんじゅうを3つ咥えて)

      「ふぇ? ふぁんふぇ?」(訳:え? なんて?)


0:旅館にて

ホームズ  「わーい、畳だ布団だ!」

ワタソン  「普段は……どこで寝てるんだ?」

ホームズ  「排除アート」

ワタソン  「イカしてるなぁ……」

ホームズ  「温泉とかあるかなぁ?」

ワタソン  「君、水濡れ注意じゃなかったか?」

ホームズ  「別腹だよっ! ぶっちゃけ先生以外に気が付く人いないだろうしね」

ワタソン  「たしかに。3年前は気付かなかったな」

ホームズ  「初対面だったしね」

ワタソン  「君と過ごして、観察力も上がった気がする」

ホームズ  「まだ『見ている』だけだよ」

ワタソン  「これは手厳しい。でもだからこそ、君の力を貸してほしいんだ」

ホームズ  「言ったじゃん? 僕は推理なんてしないよって」

ワタソン  「はいはい。じゃあせめて話を聞いてくれ」

ホームズ  「うん」

ワタソン  「ありがとう。それで、落下死でない根拠だが、骨折の仕方があまりに違う」

ホームズ  (驚いて)「そんなこともわかるの?」

ワタソン  「なんだ、知らないのか

      「普通、落下した場合は最初に着地した部位の骨折が激しく、離れれば離れるほど減っていく

      「例えば足から着地したら、脛骨(けいこつ)・大腿骨(だいたいこつ)・骨盤(こつばん)・椎体(ついたい)・頭蓋骨(とうがいこつ)といった順番

      「頭から落ちたらその逆だ

ホームズ  「足から頭、頭から足、みたいな順番だね」

ワタソン  「しかし、骨盤と頭。この二つはどうにも離れている」

ホームズ  「風化したんじゃないの?」

ワタソン  「考えづらいな。頭の骨、特に側頭骨(そくとうこつ)と歯牙(しが)は全身の中でも最高レベルで硬い

      「骨盤だって大きい骨だ」

ホームズ  「へぇ~」

ワタソン  「腕の骨折が目立つのも重要だ」

ホームズ  「落ちた時に手をついたとか」

ワタソン  「折れ方が違う。あれは防御損傷だ。被害者は、死ぬ前に誰かから暴行を受けた

      「両腕で身をかばったが、守り切れなかった。刃物の使用はないと思われる

      「少なくとも骨に鋭い傷は残っていなかった」

ホームズ  「……」

ワタソン  「肋骨の後ろにも骨折が目立った。犯人は複数人だ」

ホームズ  「じゃあ……」

ワタソン  「間違いない。これは殺人事件だ」

ホームズ  「……ちょっと、温泉、入ってくる」

ワタソン  「あぁ、まだ夜は冷えるな……」

ホームズ  「長くなるから、先寝ててね」


  ――ワタソンの夢の中で、過去が回想される

  ――ワタソンの自宅

  ――ワタソンが寝ているとスマートフォンが鳴る。ワタソンは起きて、電話に応答する

ワタソン  「はい、どちらさまでしょうか?」

ホームズ  「もしもし、夜分遅くに失礼します。渡村(わたむら)さんのお電話でしょうか?」

ワタソン  「はい、そうですが……」

ホームズ  「そうですか。申し遅れました。私(わたくし)、私立探偵の守屋ホームズといいます」

ワタソン  「あぁ、あのご高名な。ブログ記事は何度か……で、ご用件は?」

ホームズ  「失礼ですが、モースタンさんとはどういったご関係でしょうか?」

ワタソン  「……えっと、言わなければならないんでしょうか?」

ホームズ  「はい、実はモースタンさんが事故にあわれたのですが、関係者でないと――」

ワタソン  「事故っ!? 無事なんですか?」

ホームズ  「ですから、ご関係を……」

ワタソン  「同棲関係です! それで!?」

ホームズ  「……落ち着いて聞いてください……

      「モースタンさんは……滝に、落下しました。現在、警察が捜索中です」

  ――夢/回想は終わり


  ――朝。旅館。

  ――ホームズはすでに起きており、うなされているワタソンを見守っている

  ――ワタソンが跳ね起きる

ワタソン  「……っ!」

ホームズ  「おはよう。ワタソン先生」

ワタソン  「……あぁ、おはよう」

ホームズ  「またあの夢?」

ワタソン  「またあの夢」

ホームズ  「お茶でも飲んだら」

ワタソン  「……ダマされないぞ」

ホームズ  「wただの旅館のお茶だよ?」


  ――ホームズ、机の上のコップを手に取って飲む


ホームズ  「ズズッ……うん、意外とおいしい……」

ホームズ  「ほら、僕が飲んだものなら安心でしょ?」

ワタソン  「まぁそうか……ありがとう……」


ワタソン  「ズズッブッ! ゲェッ! なんだコレェ! 生ぐっさいっ!」

ホームズ  「旅館の入口にあったやつw。ほら、那智勝浦(なちかつうら)の海の幸(さち)だよ~ww」

ワタソン  「出汁かっ。くそっ、ダマされた!」

ホームズ  「……全部飲んで。普段の先生なら、匂いで気づけたはず。疲れてる証拠だよ」

ワタソン  「……」

ホームズ  「きのうも遅くまで考えてたんじゃない?」

ワタソン  「……ったく。飲んだらいいんでしょ?」

ワタソン  「ズッ……ズズッ……ゴクゴク。プハッ……」

ワタソン  「悪くないな……」

ホームズ  「朝ご飯食べよ? 話はその後でも悪くないよ」


  ――二人は砂浜を歩いている。ホームズは帽子を被っている

ホームズ  「わーい海だ海だ! 独り占めだ!」

ワタソン  「海開き前だからね……まぶしいな」

ホームズ  「波も銀色だね! ……日焼け止め塗っておいて正解だぁ」

ワタソン  「……変装中でも日焼け止めってちゃんと塗るんだ……」

ホームズ  「あったりまえじゃん、紫外線は乙女の敵だよ? 帽子、貸してあげよっか?」

ワタソン  「それは君が被っていてくれ……」

ホームズ  「なんでさー。モースタンさん、ガッカリしちゃうよ?」

ワタソン  「もう、3年経つ」

ホームズ  「あきらめちゃったの?」

ワタソン  「……あきらめてないさ」

ホームズ  「あきらめた声してる」

ワタソン  「違うっ。あきらめてない!」

ホームズ  「あ、怒った」

ワタソン  「っ、このっ! いいか! あきらめ切れないから、こうして本気で探しているんだ!」

ホームズ  「ゎー」

ワタソン  「ホームズ、君こそどうなんだ! 昨日から変だぞ? 話を妙に、こう、はぐらかしている」

ホームズ  「……」

      「事故死じゃあ、ダメなんだね?」

ワタソン  「昨日、所見(しょけん)は述べただろう? それに、モースタンはそんなドジな女じゃなかった」

ホームズ  「……ねぇ、ワタソン先生は、あの死体が、本気でモースタンさんだと思ってる?」

ワタソン  「あぁ」

ホームズ  「……」


ホームズ  「……じゃあ、ちょっと座って」

ワタソン  「……あぁ。君は立ったままなのか」

ホームズ  「靴を脱ぎましょう~靴下も~」

ワタソン  「はいはい……私もビーサンを履いてくればよかった……っしょ」

ホームズ  「楽だよ~」

ワタソン  「で……なんだ? いまさらヒントでもくれるのか?」

ホームズ  「ううん、僕が引くのはコレ


  ――ホームズ、二人の間、砂浜に線を引く。ザザッ

ワタソン  「線?」

ホームズ  「補助線」

ワタソン  「そうか」

ホームズ  「では、お手元にスマートフォンをご用意ください」

ワタソン  「注文が多いな……」

ホームズ  「『CD ミステリー Web小説』で調べてみて」

ワタソン  「え? ミステリーも書いてらしたのか……」


  ――ワタソン、スマホをしげしげとみつめて

ワタソン  「『名探偵の最初の事件』? 4年前には出てるのに、聞いたこともなかった」

ホームズ  「読んでみて」


  ――ワタソン、しばらく小説を読みふける


ワタソン  「ふぅ……」

ホームズ  「どうだった?」

ワタソン  「はっきり言っていい?」

ホームズ  「もう、半分言ってない?」

ワタソン  「……ひどい出来だった。いっそ別人であってくれ」

ホームズ  「正真正銘、CD先生の作品だよ。どこがそんなにつまらなかった?」

ワタソン  「うーん……」

      「……これは、本当は言いたくないんだが……

      「……」

      「特に名探偵が滝に落ちたのに生きているのはやはり、ミステリーとしてご都合主義がすぎる」

ホームズ  「なるほど」

ワタソン  「……申し訳ないが、CD先生には歴史小説だけ書いていただいて……」

ホームズ  「そう、面白くなさ過ぎて、大炎上。殺害予告まで届いたんだって

      「CD先生初のミステリー小説の続編は、出ることがなかった」

ワタソン  「あぁ、ホームズ。もしかして、あれが言いたいのか?」

ホームズ  「ん?」

ワタソン  「ほら、読者が続編を殺した、みたいな」

ホームズ  「チッ」

ワタソン  「それともあれか?

      「現実がミステリーを殺す、みたいな

      「それとも、生存フラグが驚きを殺す、の方?」

ホームズ  「あーあー、どんどん出てくる。僕もそろそろ、引退かな」

ワタソン  「何の引退だよ……」

ホームズ  「探偵の。じゃあ、そろそろ自首してくるね~」

ワタソン  「え!? は? なんつった」

ホームズ  「自首! 私は人を殺しました、って」


  ――ホームズ、走り出す

ワタソン  「あ、ホームズ! 待て!」


ワタソン  (ナレーション風に)

「あの朝、あの浜辺で。靴を必死に履きなおす私をさえぎるように。かのフェルメールの絵画のように

 彼女は振り返った。振り返って、薄く開いた唇の先で、確かに、こうつぶやいた」


ホームズ  「こっちに来ないでね、先生」



  ――大学の解剖室。ワタソンは一人で椅子に座っている。

ワタソン

「それからひと月がたった。マスコミもインフルエンサーも野次馬も那智山からつゆと消えた。あれだけ加熱していたSNSは水を打ったように静まり返った

 被害者は会社員B。一緒に旅行していた昔の音楽仲間によると、日中、特に変わったことはなかったそうだ。ところが温泉の後から急に様子がおかしくなり、翌朝、姿を消していた

 遺体はすぐに見つかった。偶然にも、ちょうど現場検証中の白骨化遺体付近へ落下したから


 犯人もすぐに見つかった

 偶然にも、若い女と口論の末に突き落とされたことが、

 偶然にも、新しく設置された監視カメラに映り込んでおり、

 偶然にも、その若い女の顔が、

 偶然にも、正面から映っていたから」


  ――ワタソン、机をたたく


ワタソン  「クソッ、何が偶然だ!」


ワタソン

「ところが、事件が判明したのはさらに早かった。遺体が発見されるよりも、監視カメラが確認されるよりも早く、その若い女が近くの駐在所へと出頭していた。

 女は言った」

ホームズ  『私は会社員Bを滝へ突き落としました。交際相手でした。日常的にDVを受けていて、限界がきたんです』

ワタソン

「警官は名前を問うた。女は頑(かたく)なに答えなかった。仕方なく、顔写真だけを撮り、警察署へ移送された

 もちろん、これだけなら世間の注目を集めることはなかっただろう。事態が動いたのは被疑者(ひぎしゃ)の移送後だった。取り調べ中、トイレへ立った女は忽然(こつぜん)と姿を消した

 県警はただちに捜索を始めた。全国指名手配も発せられ、カメラ映像や顔写真はインターネットのオモチャとなった

 言うまでもない。あの日のホームズの顔だ


 当然、一日中彼女と一緒にいた私も取り調べを受けた。しかし、法医学者としての信用と人づてで、何とかホームズに関してシラを切ることができた」


  ――ワタソン、暗澹として

ワタソン

「……できてしまったのだ。私はどうしても、ホームズを疑うことができなかった。ホームズに、被害者を突き落とすタイミングがあったと知っていても、おそらく変装して脱走したのだろうと勘付いていても。私はそれを警察に話す気にはなれなかった

 女の身元はすぐに、女子大生Kだと割れた。しかし、取り調べにより分かったのは、彼女が事件当日、文学部のゼミ合宿で遠方に宿泊していたこと、そして、会社員Bとの交際歴がないことだった。証拠不十分。彼女は、釈放され、自殺した」


ワタソン  「どういうことだ……ホームズ。お前は何がしたかった……!」



  ――ノック音。


ワタソン  「ん? こんな夜更けに?」


ワタソン  「……どうぞ」

ホームズ  「ただいま」

ワタソン  「ホームズ……!?」

ホームズ  「会いたくなっちゃった」

ワタソン  「ホームズ……聞きたいことが、山ほどある」

ホームズ  「ワタソン先生、おかえりも言ってくれないの?」

ワタソン  「……それどころじゃない」

ホームズ  「愛の告白でもいいんだよ?」

ワタソン  「茶化すな」

ホームズ  「もぅ……じゃあ、これだけは教えてあげる」


ホームズ  「あの4人は、僕が殺した」


ホームズ  「情報はそろったよ、お話はお家でしよ? お茶でも飲みながら」

ワタソン  「……わかった」


  ――小休止

  ――演者・読者・観客は、優雅なティータイムをとってよい


  ――ワタソンの家。ソファーに腰かけている。

ホームズ  「ズズッ……モナミ、お茶の淹(い)れ方がなってない」

ワタソン  「君に言われたくないな、ホームズ」

ホームズ  「そう、モナミ」

ワタソン  「モナミモナミって誰のことだ?」

ホームズ  「フランス語で、わが友人、って意味だって」

ワタソン  「気持ち悪い」

ホームズ  「藍里(アイリ)君、の方がいい?」

ワタソン  「君に下の名前で呼ぶ許可は出したことがない。いつも通り先生で」

ホームズ  「じゃあ、先生。どうする? といっても僕はあんまり話すつもりないよ」

ワタソン  「相変わらず非協力的な……せめて、水平思考クイズみたいに推理の正誤判定は?」

ホームズ  「はいよろこんで。あなたのために」

ワタソン  「出来ることなら、全部語ってくれた方がたすかるよ」

ホームズ  「はい謹んでお断りします」


ワタソン  「まず、わかりやすいところから固めていくか」

ホームズ  「クロスワードパズルの鉄則だねっ」

ワタソン  「ふむ……会社員Bは君が呼び出して突き落とした」

ホームズ  「正解」

ワタソン  「意図的に監視カメラに映りこみ、スキャンダラスな言葉とともに自首した。警察に写真を撮らせたのち、変装して脱出した。女子大生Kの自殺は意図的なものだった」

ホームズ  「大正解」

ワタソン  「昨年の俳優Aの死亡事故、あのトリックも君が演出家に教えた」

ホームズ  「正解」

ワタソン  「なんなら演出家に変な思想を仕込んだ。演劇は『役者の死』によって完成するとか言って」

ホームズ  「正解」

ワタソン  「はぁ……。今からでも君を殴り飛ばしたいよ」

ホームズ  「不正解。本気なら僕はもう殴られている」

ワタソン  「正解にしてやろうか……?」


  ――ホームズ、微笑む。ワタソン、首を振る


ワタソン  「じゃあ、あと一人はあれか、水死体。登山部のカップルの」

ホームズ  「不正解」

ワタソン  「えぇ? じゃあ、誰だ? 4人目は私の知らない殺人か?」

ホームズ  「大、不正解」

ワタソン  「…………まさか……お前……」

ホームズ  「大正解」

ワタソン  「っ! ……貴様っ! モースタンをっ!」


  ――ワタソン、ホームズの胸ぐらをつかむ

ホームズ  (息苦しそうに)「ぁ……先生は……こっち……来ないでって……言ったでしょ?」

ワタソン  「ふざけるなっ………お前…………モースタンを、殺したのかぁっ!」

ホームズ  「……不正解ぃ」

ワタソン  「何が言いたい!」

ホームズ  「せんせ、くるし……」

ワタソン  「っ! だぁあっ!!!」


  ――ワタソン、ホームズをソファーへ押し返す

ホームズ  「ケホッ、ケホッ、苦しいよ、先生」

ワタソン  「うるさい、だまってくれ……」


  ――ホームズ、お茶を飲む

ホームズ  「ゴクン。ケホンッ、さっき、大正解っていったのは、あの骸骨(がいこつ)の方だよぉ……」

ワタソン  「……

      「……モースタンじゃないのか?」

ホームズ  「えっと、これはどう答えたらいい?」

ワタソン  「すまない、言い方が悪かった。『あの白骨化遺体はモースタンである』」

ホームズ  「不正解」

ワタソン  「ぁあ、もう……

      「じゃ、誰なんだ……」

ホームズ  「ローラーしたら?」

ワタソン  「もう登場人物がそんなにいないぞ……演出家」

ホームズ  「不正解」

ワタソン  「CD先生」

ホームズ  「正解」

ワタソン  「まぁ、そうだよな……あとは……

      「って、え? 待て、今、正解といったか?」

ホームズ  「そうだよ、あの死体はCD先生だ」

ワタソン  「今でも新刊が出ているじゃないか」

ホームズ  「半分不正解」

ワタソン  「生前に書いたもの」

ホームズ  「不正解」

ワタソン  「ゴーストライター」

ホームズ  「正解」

ワタソン  「なんてこった、気づかなかった……」

ホームズ  「仕方ないよ、最近はいろんなツールがあるからね~」

ワタソン  「何のことだ?」

ホームズ  「おっと喋りすぎた」

ワタソン  「このクソガキィ」

ホームズ  「不正解」

ワタソン  「あぁ! もう! 死んじゃって!」

ホームズ  「まぁゆっくりお茶でも飲んでくださいな」

ワタソン  「そうするよ……ズズッ……

      「ハァ~……いつも通り、マズいな……」

ホームズ  「言ったでしょ?」


ワタソン  「……要するに、ホームズがCD先生を殺したということ?」

ホームズ  「うーん、正解、と答えるのは少しアンフェアかも」

ワタソン  「君が直接、手を下した」

ホームズ  「それなら、不正解、だね」

ワタソン  「殺害を命令した」

ホームズ  「不正解」

ワタソン  「間接的に死にかかわっていた。君は殺すつもりがなかった」

ホームズ  「どちらとも正解」

ワタソン  「事故?」

ホームズ  「不正解。あーこの形式にも飽きてきたなぁ……」


ホームズ  「ちょっとお茶淹(い)れてくるね~」

ワタソン  「ズズッ……助かる」


  ――ホームズ、キッチンへ向かう


ワタソン

「話を整理しよう

 ホームズが殺した4人とは会社員B、女子大生K、俳優A、そしてCD先生だ

 そのうち、B、K、Aの3人は殺意を持って直接的、あるいは間接的に殺害した。殺害方法も犯人もわかった。問題は、動機だ

 一方、CD先生については何もわかっていない。殺意はなかったが、間接的には死に関わっていた。とはいえ、事故死ではない」


ワタソン  「果たして、そんな状況がありうるだろうか……」


  ――ワタソン、残りのお茶を不味そうに飲み干す


ワタソン  「あ……

      「サバイバーズ・ギルトか……?」


  ――ホームズ、キッチンから戻る


ホームズ  「部分点。本来、自分が死ぬべき状況で生き永(なが)らえ、他の人が死んだとき、生存者は『殺してしまった』と罪悪感を覚えることがある。僕がそれを感じているのは、間違いないかな」

ワタソン  「……」

ホームズ  「……粗茶です」

ワタソン  「信用できないな……」

ホームズ  「飲んでもらえれば、信用してもらえるよ」

ワタソン  「はいはい……」


  ――ワタソン、おそるおそる飲む

ワタソン  「ズズッ……ブッ……!」

ホームズ  「あれ? まずかった?」

ワタソン  「いや……」

ホームズ  「残念」

ワタソン  「……その正反対だ……」

ホームズ  「よかった……腕は落ちていなかったみたいだね」

ワタソン  「そんな……わけない……」

ホームズ  「そんなわけ、あったとしたら?」

ワタソン  「本当に……?」

ホームズ  「……」

ワタソン  「本当に……モースタンなのか?」

ホームズ  「……」


ホームズ  「正解」



ホームズ  『モースタンは、ホームズを殺した』

      「ただいま、最愛の人。僕の、渡村(わたむら)藍里(あいり)」


  ――時間経過

  ――ワタソンの家。二人は相変わらずソファーに腰かけて話し合っている


ワタソン  「モースタン……いや、やはりしばらくホームズで呼ばせてくれ、まだ混乱している」

ホームズ  「好きにして」

ワタソン  「ホームズ、君はホームズを殺したと言ったな? ということは、あの4人の中にホームズが?」

ホームズ  「そうだよ~、まぁCD先生だね」

ワタソン  「あんなミステリーしか書けないCD先生が、あの高名なホームズだったとは思えない」

ホームズ  「じゃあ聞くけど藍里、ミステリー作家の才能って何だとおもう?」

ワタソン  「まぁ、トリックを考える才能じゃないかな?」

ホームズ  「大事なことだね。でも、もっと大切なものがあった」

ワタソン  「なに?」

ホームズ  「CD先生に欠けていたのは、トリックを伝える能力」

ワタソン  「ってことは、滝に飛び込んでも生存するトリックも、ちゃんとあったのか」

ホームズ  「まぁ、シンプルなものがね」

ワタソン  「教えてくれ」

ホームズ  「今話したいのはそっちじゃない」

ワタソン  「そうかよ……」


  ――ホームズ、ソファーから立ち上がり歩きながら話す。

ホームズ  「フランスの哲学者ロラン・バルトに曰く『読者が存在するために、作者は死ななければならない』と」

ワタソン  「過激だな……」

ホームズ  「文脈としては、読者は必ずしも作者の意図を汲(く)む必要はない、文章に書かれていることを書かれている範囲で、好きに読み取ってかまわない。その際、作者が権威的存在として生きているのは不都合だ、という話だよ」

ワタソン  「解釈は自由ってことか」

ホームズ  「で、ここからは僕の『解釈』だけど……作品と作者は別の存在だ

      「作者は親でもなければ神でもない。偶然に居合わせた他人であり、羽ばたいた瞬間に責任も権利も喪失する。作品に熱狂的なファンがいても、彼らは本来、作者と関わるべきではない、ましてや他の作品に干渉するべきではない」

ワタソン  「……君は、CD先生のミステリーが好きだったのか……」

ホームズ  「イエス。世界で一番の、そして唯一のファンだった。それゆえに、世界がそれを解釈しないのを歯がゆく思っていた。そこで僕は考えた。このトリックが可能だ、と証明しようと」

ワタソン  「まさか……お前……」

ホームズ  「舞台は那智の滝。季節は初夏。落差もカモフラージュも十分だった。僕は滝の後ろに銀色のロープを隠し、滝から飛び出る部分は、水しぶきの反射光と新緑にまぎれるよう計算した。先生のファンが変な言い訳をしないように、顔写真も公開した」

ワタソン  「ネットリテラシーはどこへ……?」

ホームズ  「素晴らしい視点だが時にはそれ以上に大切なものがある」

ワタソン  「……本当に、トリックってロープだけか? もっとあるだろ、こう、メカメカしいやつとか」

ホームズ  「複雑なトリックに命を預けたくないよ。シンプルが一番」

      「うん、ロープ以上に信じられる存在はない」

ワタソン  「そう聞くとモースタンらしいな……それが、どうしてCD先生の死につながるんだ?」

ホームズ  「決行日の数日前になって、CD先生は、僕に連絡してきた」

ホームズ  「『せっかくの検証はうれしいが、読者の命を危機にさらすわけにはいかない』

ホームズ  「『モースタン君は上で待機して、ロープの回収を頼む。変装術で入れ替わり、こちらが代わりに飛び込もう』

      「僕は提案を呑んだ。これが僕の最大の罪だ」


ホームズ  「ボーナスタイム、終了だよ」


ホームズ  「水平思考クイズに戻ろう。著名な作家が滝から落ちてから死んだ。なぜか?」

ワタソン  「ロープが切れたあるいは切られた」

ホームズ  「いいえ、トリックもカモフラージュもは完璧に作動しました」

ワタソン  「落下途中なのに、協力者が間違って外してしまった」

ホームズ  「モースタンはそんなドジな女じゃなかった。手順くらい決めていたよ」

ワタソン  「じゃあ、なんだ?」

ホームズ  「藍里は法医学者じゃないの?」

ワタソン  「……あぁ、そういえば……

      「白骨化遺体は複数人に暴行されて死んでいた。殺されたのは、無事に降りた、その後の話だ」

ホームズ  「はい、CD先生は複数人に暴行されて死にました」

ワタソン  「……誰にだ?」

ホームズ  「作者を殺せるものなんて、数えるほどしかない」

ワタソン  「読者、か……」

ホームズ  『はい、読者は作者を殺しました』



  ――ワタソンの家。二人は相変わらずソファーに腰かけて話し合っている

ワタソン

「CD先生は殺された」

 フーダニット、犯人は誰か。読者、それも複数人だ。歴史小説のファンだろう

 ハウダニット、どうやって殺したか。集団暴行で間違いない

 ホワイダニット、なぜ殺したか」


ワタソン  「……ファンが作者を殺すか……?」

ホームズ  「言ったでしょ? 作品のファンと作者のファンは区別するべきだ。どれだけ作品を読んでも、作者のことは知りえない」

ワタソン  「作者だと知らずに殺したとか? ……あ、変装!」

ホームズ  「思い出した? CD先生はモースタンに変装していた」

ワタソン  「そうか。モースタンなら、彼らに嫌われていたはずだ

      「同じファンだというのに、推理小説を好み、歴史小説をきらっていたから」

ワタソン  「ましてや、トリックの正しさが証明されれば、CD先生はまたミステリーを書いてしまう」

ホームズ  「奴らにとって、僕は邪魔者でしかなかった。殺すのは合理的だろう?」

ワタソン  「非合法的だな。社会正義に反する」

ホームズ  「正義なんて相対的なものだよ。その殺人が正義と思えるなら殺すべきだ」

ワタソン  「……」

ホームズ  「困惑しているね。でも、ここまで解いたご褒美に、僕の回想をプレゼントしよう」


  ――回想。滝の上

  ――ホームズ(モースタン)がスマホを眺めている。着信音が鳴り、ホームズは直ちに電話に出る。

ホームズ  「はい、先生。はい、よかったです。じゃあ、ロープ外しますね」

ホームズ  「よいしょ、よいしょ……」


  ――ホームズ、ロープを手繰り寄せ、リュックの中にしまう

ホームズ  「回収終わりました。今からそっち向かいます」


ホームズ  「あれ? 先生? 聞こえませんか?」


ホームズ  「先生? どうしたんですか? 先生?」


ホームズ  「大丈夫ですか!」


  ――ホームズ、急いで走り出し、退場。以降はナレーション風に


ホームズ  「僕はCD先生を探して崖下(がいか)まで駆け下りた」


ホームズ  『僕がただ一人、戸惑いながら足を進めていると、ふいに、道を曲がった角で、大勢の人ゴミが目にとまった』


ホームズ  (絞り出すように)「……ッ……CD先生……」


ホームズ  『無礼な学生の集団が取り巻いていた。そして、彼らの叫び声や攻撃的な態度をみて、彼らが何をしようとしているかを、僕は理解した』


ホームズ  「僕は後ずさった。彼らの姿を見て、僕は逃げた」


  ――回想終わり


ホームズ  「回想は以上だよ」

ワタソン  「……通報は考えなかったのか?」

ホームズ  「考えた。でも、しなかった」

ワタソン  「なぜ」

ホームズ

「理由は3つ

 1つ目。CD先生の正体はあの私立探偵ホームズ。名探偵が死んだことが明るみに出た場合の、世間への影響は避けたかった

 2つ目。那智の滝というのは神聖な場所だ。聖地でミステリーの実験をしたことが知られるなんて、嫌だった。僕自身そうだし、CD先生の名誉すら傷つけてしまう気がした

 3つ目……。集団リンチ事件で、全員を死刑にするのはかなり、難しい」


ワタソン  「ホームズ……きみは……」

ホームズ  「ねぇ、スマホ貸して」

ワタソン  「あ、ああ、かまわないが……」


  ――ホームズ、スマホを借り、立ち上がってワタソンから離れる


ホームズ  「フフッ、パスワードは相変わらず、僕の誕生日なんだね」

ワタソン  「悪いか」

ホームズ  「うれしいよ」

ワタソン  「くぅ……。それで、何がしたい」

ホームズ  「先生の不埒(ふらち)な盗撮記録」

ワタソン  「あぁ、君の変装日記か。何が見たいんだ?」

ホームズ  「ポチポチ……

      「はい。もう、全部消したよ~」

ワタソン  「まてっ! 人のスマホを勝手に」

ホームズ  「じゃなくて、全員殺したんだよ。この間、ようやくね」

ワタソン  「……え?」

ホームズ  「僕はね『CD先生を殺した人間』の、変装をしていたんだよ。彼らを探し出して、刈り取るために」

ワタソン  「……信念をもって、変装をするな……」

ホームズ  「ポリシーがありますから……」

ワタソン  「一体……何人殺したんだ……?」

ホームズ  「……忘れちゃったw大勢いたし、大半は顔しか知らないから、3年もかかっちゃった~」

ホームズ  「……ちょっと横になるね」


  ――ワタソンの家。ワタソンはソファーに腰かけている。ホームズはソファーで横になり、目を閉じている

  ――ワタソンはホームズを起こさないような声で話す

ワタソン  「大変だったろね……

      「もっと早く、気づいてやれなくて、ごめんね……」


ワタソン

「4人の死者の、犯人も死因も動機も明かされた。会社員B、女子大生K、俳優Aの3人は、3年前にCD先生を殺した大勢の中にいた。それでも釈然(しゃくぜん)としないことは、いくつかある。

 なぜ、CD先生の遺体は3年間も発見されなったのか?

 なぜ、頭部と骨盤の損傷が激しかったのか?

 CD先生のゴーストライターは一体、誰なのか?」


ワタソン  「どうせ、それも君なんだろう?」


  ――ワタソン、ゆっくりと立ち上がり、本棚から一冊の本を取り出す

ワタソン  「君が、こんな文才を持っていたとは知らなかった」


  ――ワタソン、ぱらぱらとページをめくる

ワタソン  「歴史小説に興味がないなんて、ウソじゃん……」


  ――ワタソン、またゆっくりとソファーへ戻り、腰を掛ける


ワタソン  「……ほら、何度読んでも、面白い……」


  ――ワタソン、しばらく本を読む。そのうちに、そのまま姿勢で眠る

  ――ホームズ、目を覚ます


ホームズ  「藍里こそ、おつかれ……」


ホームズ  「うん、ちゃんと寝ているね……」


ホームズ  (語り上げるように)

 では、観客諸君、読者諸君、ここで君たちにヒントだ。君たちは既に、アーサー・コナン・ドイル作「シャーロック・ホームズ」シリーズに関する知識により、ジェームズ・モリアーティー教授こそが、「犯罪のクモの巣」、黒幕だということを知っている。彼はライヒェンバッハの滝でホームズに討伐され、しかし、セバスチャン・モラン大佐がその跡(あと)を継いだ。

 本作においては、違う。モリアーティー教授もモラン大佐も登場しない。しかし、クモの巣、は存在する。

 『悪事の大半に加担しつつ、そのほとんどは気付かれもしない。博識で、哲学者、抽象的な思考者。一級品の知能。クモの巣の、不動の要として据わり、つないだ無数の線の、そのあらゆる機微を知り尽くす』

 この翻訳の意味を、よくよく考えてほしい」


ホームズ  「以上だ。諸君はスマホを片手に観客席へと戻りたまえ。うっかり、僕を殺してしまう前にね」


  ――ホームズ、ワタソンのもとへと戻り

ホームズ  「ほら、藍里。このままだと風邪ひくよ」

ワタソン  「ん……んぅ? ……もう少しだけ……」

ホームズ  「コラ……わがまま言わない……」

ワタソン  「……はーい……」


  ――翌朝。ワタソンの家。ワタソンはベッドの上で寝ている

ホームズ  「おはよう。ワタソン先生」

ワタソン  「……あぁ、おはよう」

ホームズ  「大丈夫? 夢は見なかった?」

ワタソン  「……なぁ、ホームズ」

ホームズ  「何?」

ワタソン  「君がモースタンだというのは、夢じゃないんだよな?」

ホームズ  「安心して。もうどこにもいかない」

ワタソン  「うん……」

ホームズ  「粗茶です」

ワタソン  「ありがとう……ズズッ……うまいな……」

ホームズ  「よかった」

ワタソン  「……CD先生の遺体を隠したのも、頭と骨盤の損傷が激しかったのも、どちらも、君の仕業だな?」

ホームズ  「一晩寝て、すっきりしたようだね」

ワタソン  「君はホームズになり替わろうとした。死んだのがホームズだとわかって、一番不都合なのは君だ」

ホームズ  「リンチした彼らは違うの?」

ワタソン  「きっと彼らもどこかへ死体を隠しはしただろう

      「しかし、3年間も発見されなかったのは、わざわざ君が隠しなおしたからだ」

ホームズ  「根拠は?」

ワタソン  「会社員Bが落下したのも同じ場所だった。かつて、滝を調べつくした君は、どこから落下したらどこへ着地し、発見されづらいのかを知り尽くしていた」

ホームズ  「それから?」

ワタソン  「遺体が発見され、監視カメラが新設されたことも予想できた」

ホームズ  「それだけ?」

ワタソン  「首の骨に、切り傷のような痕跡はついていなかった。体と頭が分離されたのは、ある程度、白骨化した後だ」

ホームズ  「おぉ、見事な観察眼だ」

ワタソン  「おかげさまで」

ホームズ  「ううん、本当にすごい」


ワタソン  「……いや、すごいのは君だよ」

ホームズ  「そう?」

ワタソン  「変装、観察、推理、犯罪計画、犯罪遂行。医学、法医学、法学、歴史学。演劇論、文芸評論、小説執筆

      「あとは……まぁ、ロッククライミングがもともと出来るのは知っていたが……」

ホームズ  「超人的すぎるって言いたい?」

ワタソン  「非難の意図はないよ。ただの賛辞だ」

ホームズ  「うれしくないね。それは僕に向けられるべきものじゃない」

ワタソン  「はい?」

ホームズ  「藍里、たしか君は『犯罪のクモの巣』の手がかりを追っていると言っていたね」

ワタソン  「君を探すためにね。今となってはどうでもいいと思っていた、の、だが……」

ホームズ  「大人の事情で、以降は『犯罪のクモの巣』のこと、『モリアーティー』って呼ぶね」

ワタソン  「はじめて聞く名だな……」

ホームズ  「ホームズはモリアーティーを利用し、利用されていた」


ホームズ  「そうだ。お散歩いこ? いいお天気だよ」


  ――季節は梅雨。いまにも崩れそうな天気

  ――二人、公園の中を歩いているが、ワタソンは息を切らしている

ワタソン  「っはぁっ……本当に傘はいいのか! 今にも降り出しそうじゃないか!」

ホームズ  「いーらないっ!」

ワタソン  「っはぁっ……ほら、天気予報だって!」

ホームズ  「いーらないっ!」

ワタソン  「っはぁっ……水濡れ注意じゃないのか……」

ホームズ  「先生~おいてくよ~!」

ワタソン  「坂道だ、仕方がないだろ!」

ホームズ  「これぐらいは平地でしょ~」

ワタソン  「イカレてる……っはぁ、っはぁ」


ワタソン  「っはぁっ……おまたせ……」

ホームズ  「藍里はさ、その天気予報、どうやってるか知ってる?」

ワタソン  「っはぁっ……っはぁっ……ちょっと待ってくれ……」

ホームズ  「はい、お茶どうぞ」

ワタソン  「ありがとう……ゴクリ。ふぅ……

      「天気予報だろ? ……どうって、衛星で雲を見たり、各地の温度や湿度を測ったり?」

ホームズ  「それでわかるのは、過去と現在だけでしょ?」

ワタソン  「まぁ、確かに未来はわからないか……」

ホームズ  「答えは、データだよ

      「過去と現在のデータをでっかいコンピューターに食わせて、このパターンなら晴れっぽい、こっちは雨っぽい、って計算するんだ」

ワタソン  「博識だな……」

ホームズ  「うん……モリアーティーに教えてもらった」

ワタソン  「そんなに密(みつ)に連絡を取りあってるのか?」

ホームズ  「うん、ほら!」


  ――ホームズ、スマートフォンをワタソンに見せる

ワタソン  「これは……AIじゃないか」

ホームズ  「そうだよ~」

ワタソン  「これが、『犯罪のクモの巣』!?」

ホームズ  「www」

ワタソン  「草をはやすな。何が面白いっ」

ホームズ  「ダブリュー・ダブリュー・ダブリュー。さぁ何の略?」

ワタソン  「あぁ、えーっと、ワールド・ワイド・ウェブ……」

ホームズ  「ウェブってどういう意味?」

ワタソン  「クモの巣……」

ホームズ  「モリアーティーの正体は、インターネット、それを形作った人間、それを学習したAI、だよ」

ワタソン  「そういうことか……」

ホームズ  「第一の事件に戻ろう。R川に上がった水死体、彼女がだれに殺されたのかを語ろう」


ホームズ  『続編は作者を殺す』

ホームズ  「次のシーンで、おしまいだよ」


  ――二人は公園のベンチに座って、お茶を楽しんでいる

  ――二人は好きなタイミングで、ズズッしてよい

ホームズ  「おかしいと思わなかった? 恋人から、一緒に山に行こう、って誘われ、しかもネクタイをしている

      「多分、プロポーズだなぁ、ってうすうす気づいていたはず」

ワタソン  「まぁ、予想はつくな」

ホームズ  「フツー、断る気なら、最初からついて行かないよね

      「山の中なんて、何をされてもおかしくないんだから」

ワタソン  「行く途中で幻滅(げんめつ)したのかもしれない」

ホームズ  「正確に言うと、幻滅させられた」

ワタソン  「誰に?」

ホームズ  「会社員Bに」

ワタソン  「何の関係があるんだ」

ホームズ  「会社員B、大学時代は女を殴るようなバンドマンで、いろんな女に手を出していた。被害者もその一人」

ワタソン  「そんなつながりが……」

ホームズ  「自分から捨てといてさ、プロポーズのうわさを聞いたら、急に独占欲が湧いてきたんだろうね」

ホームズ  「会社員Bはいったん、彼氏を応援するフリをして、スケジュールを聞き出した

      「そして、プロポーズのタイミングを狙って、大量の画像を送りつけたんだ

ワタソン  「画像? 何の?」

ホームズ  「女が、浮気をしていた証拠」

ワタソン  「浮気?」

ホームズ  「でっちあげだよ。変な男に引っかかることはあっても、浮気をするようなバカな子じゃなかった」

ワタソン  「じゃあ、どうやって――」

ホームズ  「生成AI。詳しくは問い詰めなかったけど、偽のヌード画像を作るサービスなんて今どき、いくらでもあるからね」

ワタソン  「そうか……忌々(いまいま)しい技術だな」

ホームズ  「僕らにはどうにもできないし、使わないわけにいかない」

ワタソン  「……今つながったよ。君はCD先生のゴーストライターだった」

ホームズ  「半分正解」

ワタソン  「モリアーティーもまた、CD先生のゴーストライターだった」

ホームズ  「もう半分も正解」

ワタソン  「なるほどな……」

      「君はCD先生のゴーストライターをするためにAIを使っていた

      「ホームズがモリアーティーを利用していたというのは、そういうことだったんだな……」

ホームズ  「解説ありがとう」

ワタソン  「なら、利用されていた、というのは?」

ホームズ  「こうして作った僕らの文章は、またインターネットに放流され、また学習される」

ワタソン  「無限ループだな……」

ホームズ  「近いうちに、読者にとって作者も不要になるんじゃないかな?」

ワタソン  「そうなったら、人間は消費することしかできなくなるのか?」

ホームズ  「違うよ。なぜエベレストを登るかを問われた登山家ジョージ・マロリーは『そこにあるから』と答えた。創作者の足を動かすのは、まだ見ぬ作品へ憧れだ。滑落(かつらく)の恐怖にあらがいながら、この狂気の山脈を這っていく」

ワタソン  「元・登山部、らしいな」

ホームズ  「そうだね……久しぶりに、後輩たちと山でも登りたいな……死者と逮捕者が1名ずついるけど」

ワタソン  「やはり知り合いだったのか。あの時の推理もブラフか?」

ホームズ  「僕は名探偵じゃないよ、一度も推理なんてしていない」

ワタソン  「ホームズ……」

ホームズ  「原因と結果から、それらしい推理を作っただけ。語るに値しない」


ホームズ  「……あっ……雨だ……」

ワタソン  「言ったじゃないかホームズ……ほら、滴(しずく)がつくとやっぱり違和感がある」

ホームズ  「……変装だけはね、CD先生直伝(じきでん)なんだ……」

ホームズ  「ただ、濡れても大丈夫な変装術は、教わる前だった」

ワタソン  「技術自体は存在したのか……」

ホームズ  「でも、もういらない……」

ワタソン  「……?」


  ――ホームズ、変装を解く

ワタソン  「あぁ……確かにな……おかえり、モースタン」


  ――閉幕


  ――ホームズ、最後に語りかける


ホームズ

「探偵モノの続編を書くとして、作者はどうするべきだろう。出会いを書く? 別れを書く? 探偵を逮捕する? 探偵を殺す?

 思いつくことは全部やり切ってしまった」


ホームズ  『続編は作者が殺した』

ホームズ  「僕らの冒険は、これにておしまい。」


-----

本文中に引用した訳文はいずれも作者による訳である。以下、原文とともに示す。

1. ロラン・バルト(1967年)

出典:『作者の死』(La mort de l’Auteur)

原文(フランス語):

« la naissance du lecteur doit se payer de la mort de l’Auteur. »

日本語訳:

「読者が存在するために、作者は死ななければならない」

2. テオフィル・ド・ヴィオー(1623年)

出典:『ユグノー教徒』(Le Parnasse satyrique 所収の一篇)

原文(フランス語):

« Seul j’égarais mes pas, quand j’aperçois soudain

une riche litière au détour du chemin ;

d’étudiants nombreux la troupe discourtoise l’entourait,

et leurs cris, leur air audacieux

me laissaient deviner leur projet. »

日本語訳:

「僕がただ一人、戸惑いながら足を進めていると、ふいに、道を曲がった角で、大勢の人ゴミ(litièreの誤訳。正しくは輿)が目にとまった。

無礼な学生の集団が取り巻いていた。そして、彼らの叫び声や攻撃的な態度をみて、彼らが何をしようとしているかを、僕は理解した。」

3. アーサー・コナン・ドイル(1893年)

出典:「最後の事件」(The Final Problem)『シャーロック・ホームズの思い出』

原文(英語):

"He is the organizer of half that is evil and of nearly all that is undetected in this great city. He is a genius, a philosopher, an abstract thinker. He has a brain of the first order. He sits motionless, like a spider in the centre of its web, but that web has a thousand radiations, and he knows well every quiver of each of them."

日本語訳:

「悪事の大半に加担しつつ、そのほとんどは気付かれもしない。博識で、哲学者、抽象的な思考者。一級品の知能。クモの巣の、不動の要として据わり、つないだ無数の線の、そのあらゆる機微を知り尽くす」

4. ジョージ・マロリー(1923年頃)

出典:『ニューヨーク・タイムズ』記者とのインタビュー(エベレスト登山に関して)

原文(英語):

"Because it’s there."

日本語訳:

「そこにあるから」

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続編は作者を殺す ~家出っ子ホームズ×法医学者ワタソン~ あろすてりっく @KTakahiro

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