婚約破棄されましたがそれどころではありません

メッタン

婚約破棄されましたがそれどころではありません

「ステファニー公爵令嬢!お前との婚約は破棄する。皆の前でお前の不当さを明らかにしてやろう!」



 このように宣言したのは私の婚約者であった王太子シャルル様……




 ですが私にとってはそれどころじゃないのであった……




 まさに今の2秒前に、強烈に強烈に強烈に、ふいに行きたくなったのだ。



 トイレに……



 だから皆に気づかれないように、さっと行こうとしたら、突然檀上で王太子様が宣言したのであった……




 まずい……それどころじゃない、こんなところで出してしまっては……



 圧倒的な匂いとインパクトで私はもう生きていけない。



 ってことで、「分かりました、じゃ行かせてもらうので!」



 もう軽い態度なのは承知だが、このままでは出てしまう!



 急いで離脱せねば……





「何だ今の態度は!みな見たか?王太子である私を軽んじて、さらに逃げ出そうとする行為を!」




 ……ヤバい声高に怒りだした!



 私は単にトイレに行きたいだけなのよ、戻ってきたらいくらでも応答するから!



 しかしこの私が、「トイレに行きたいから行かせろ!」何て叫ぶわけにはいかない。



 お花を摘みに行くのよと言ったところで、きっと王太子様は信じもしないだろう。




 私が普段から逃げているって思っているのだから……





 どうしよう、どうしたら?


 もういいや!




「分かりました婚約破棄でも何でもいいので、それじゃあ私は失礼させて……」





 私がこのように言おうとしても……





「……この態度である!今日こそステファニー許さぬぞ、皆の前でその態度の悪さを明らかにして、私の正当性を示してやる!」





 ……いやマジでそれどころじゃないんだって!



 お腹がギュルギュル出す感じになってる。まずいこれはそうは持たないぞ。



 走ることすら危ない、でも急がないと出てしまう……




 どうしたら……




 私の頭は段々パニックになってきた……



 もうダメだどうしたらいいのだろうか!?




 アワオwファゲンsv;アfgあrじゃえいsばM4ngues




 私は恐怖のあまり叫んだ!




「トイレなのよ!漏らしたらどうしてくれ……」




 やっちまった……叫んだ瞬間に、思いっきり出してしまった……



 しかも悪臭がよりするほうを……





 私は泣いて逃げたけど、流石に誰も止めるものもいなかった……




 終わった人生終了した。



 みんなの前でウンチを漏らした令嬢として、生涯恥をさらすことになるんだ……




 私は部屋に帰るなり生き恥故に死なせてくださいと言って、心配するものをみな叩き出した……



 そして1日くらい何も飲まず食わずでいたら、お母様が現れて……




「いいから飲みなさい、あんた死ぬわよ!」



 こういうなり無理やり飲ませるので、




「いいんです私は死にたいんです、こんな汚物生きる価値が無いんです!」



 と発狂するも、「黙りなさい、死んでいいなんてあるわけありますか!」



 お母様に叱られ、無理やり飲み物を飲まされ、少し落ち着いたのを見たのかお母様は



「プリンを用意させるから食べなさい」と私の大好物を言うのであった……




 私が何か力が抜けていると、お父様も現れて、「ウンチを漏らしたってワシらは愛しておるぞ」何て言うから余計嫌な気持ちになったら、お母様が切れて「貴方は余計なことを言わないで!」「すまん」何て会話をしている。



 さらに王太子様の側近で、普段は私のことよりも、王太子様との関係を家のため重視するお兄様すらやってきて、



「……このまま引きこもるわけにもいくまい、次に社交に出る時は私が同伴してやる!」などといつになく優しい……




「でも……」私はそれでも迷惑をかけたし恥でしかないから抵抗したが……




「黙りなさい!」お母様に叱られ、これ以上何も言えなくなるのであった……




 そしてプリンはおいしかった……




 そして2週間後、本当は嫌だったけど、お兄様に「これ以上間を開けても意味が無い」と言われ、同伴で社交に行くことになってしまった……



 ああ……どうせ私はウンチ令嬢などと言われるんだ。



 社交界で華とまで言われたこの私が……




 絶望した気分で社交の場に行くと、確かにみんなの注目を浴びたが、



 まるで腫物のような扱いをされているではないか……




 そして偶然、普段から社交の場で競って来たライバルの公爵令嬢が取り巻き共と一緒にいるも、私と目が合うと、いつになくそらすのであった……



 あれ?普段のあいつならば、ここぞとばかりに私の失敗をついて、取り巻き共に向かって嫌味を言うのにどういうこと?




 私が強くにらみつけると、観念したのか私に挨拶をしてくる。



「……ゴキゲンよう」




「……どういうことかしら?」



 私は聞いてやった、性格最低のこいつにしては大人しすぎるから、何を企んでいるのかと……




「……どういうことって、私にだって情けはあるのよ……」




 ……なんてことだ!この性格最低のクソ女ですら、私に同情をしてるのか……



 情けないって泣きたくなったが、おかげでみんな私を馬鹿にして来ないのは助かるとも思うのであった……





「……貴族の淑女としてね、言ってはならない範囲ってものがあるの、だから私は当然として、他の令嬢も、あのことは触れないわよ……」



 これだけ言って逃げるように去って行ったライバルと取り巻きなのであった……





 お兄様が言う……



「だから私は来ていいと言ったんだ、ハッキリ言おう、空気がお前に同情的なんだ、逆に考えろ、お前もあの仲の悪い令嬢が同じ立場になったら、そこを追い詰めようとするか?流石にまずいと思うだろ?」



 なるほど……確かにあのライバル令嬢は大嫌いだが、同じ立場になったら、そこをからかおうとまで私も鬼になれないだろう……



 そうか……私は限界を超えた情けないことをしてしまったのかって悲しい気分になると同時に、みなの甘さに感謝の気持ちが芽生えたのであった……





 そしてそこそこ親しい伯爵家のフィリップが私に声をかけてきた。




「ステファニー様、復活されたようで何よりです」




「あら……私に親しくなんてしてもいいの?もう私に価値なんかないわよ!」




 私はまだ気持ちが荒んでいるので、気の毒だとは思ったが半分八つ当たりをしてやった!





「……いや聞いて欲しいんだ……」





「何を?」





「弱みに付け入る様で申し訳ないけど、王太子様から婚約破棄をされたからあえて言う、僕は君と結婚をしたいんだ!」



 ええ?



 私が呆気に取られていると




「まぁ聞いて欲しい、僕は前から君のことが好きだったが、王太子様と婚約をしていたから諦めるしかないし、そもそも身分差もきつかった。だから正直君の弱みにつけ込むことになると分かっているが、それでも今ならばチャンスが辛うじてあると思ったから、結婚を申し込むんだ!」



 などと早口で顔を真っ赤にしながら言うではないか……




 ……よく考えると、フィリップが嫌いとかは無かった。男としては見ていなかったが。



 さらに身分差と言っても、成立が不可能なレベルで離れているわけでもない。



 さらにこんな私に相手が見つかるどころでないレベルの状況だったから、むしろこんな時ですら好きだと言ってくれることは感謝すべきでは?



 そう思ったので、その様子を見たお兄様が「じゃあ私はもう行くから、フィリップ君妹を頼むよ」なんて言って去っていく……





 さらに周りのものもこの様子を見ていて、正直私への扱いに苦心していたのだろう。


 そりゃあそうだよね、この光景を見て一斉に拍手を開始したのであった……




 そしてフィリップが言うには、王太子様は流石にやり過ぎでは?って思われたことで、人気が圧倒的に落ちてしまったらしい。



 いくら私に怒っていたとはいえ、あそこまで追い詰めたってことになってしまったらしい。



 実際にその後私は王太子様と遭遇したけど、相手は物凄く間の悪そうに逃げて行ってしまった……



 今思えば私と王太子様は相性が悪すぎたから、フィリップとのほうがきっとうまく行く……



 そう思うと、何が幸いするか分かったものじゃないと思った。



 あんなことをしなかったら、王太子様に公開処刑を実質されるところを思えば、


 一時の恥で私は助かったのだから……



 王太子様口が達者だから、あのまま言い合いになっていたら、身分と弁舌で私の負けは明らかでしたからね……

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