帰り道

久瀬卯月

第1話

 彼が前に良いと言ってた曲を久しぶりに聴いた。そういやあの頃私達は高校3年生だったのだなと思い出した。前は大好きだったアーティスト。好きじゃなくなったわけではないのだけれど、いつのまにかあまり聴かなくなっていた。夜、一人の帰り道、こんな曲だったのかと何年越しかに思った。そのアーティストの曲の中でも、私が好んでよく聴いていたのは他の曲で、こんなに歌詞をじっくり聴くのはもしかしたら初めてかもしれない。あの頃あの人は、この曲みたいなことを考えてたのだろうか。もしそうならば、私はその時に置いていかれてしまっていて、今になってやっと高校生の彼に追い付いたのかもしれない。こんなことを考えるなんてらしくない。きっとこのなんとも言えぬ懐かしさと少しの寂しさは、久しぶりに聴いたこの曲のせいだ。恋心だったものを、もう名も付かないような感情を、一体いつまで抱えているつもりなのだろう。手放せるのならすぐにでもそうしたいのだけれど、そうもいかないから困るのだ。今でもふとした時にあの人のことを思い出す。懐かしんでしまう。ただの初恋でただの片思い。多分、心のどっかでまだあの頃のあの人を忘れられなくて、あの頃の彼との時間に淡い恋をしている。嫌だ。恋だなんて。私が恋焦がれるのは音楽だけでいい。

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帰り道 久瀬卯月 @kuse_uduki

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