成人式
成人年齢が18歳に引き下げられ、成人式ではなく「20歳の集い」という言葉が使われることも増えた。僕の周りでは、みんな成人式と言っていたが。名称はともあれ、成人式は楽しみであった。あのフードコートの一件以来会えていない深井夏澄に、再び会えるチャンスが到来するわけである。楽しみでないわけがない。
男友達を会場の周辺で見つけ、中学の面々がいる場所に案内してもらった。
「深井スーツ似合ってるな」
「お前はスーツ似合わんな」
童顔な同級生に軽口を叩きながら、久々の再会に胸が高鳴っていた。ビシッとスーツを着た男たち。色とりどりの振袖をした女たち。そんな光景を見ていると、自分が今まさに晴れの日を迎えているんだな、とひしひしと感じた。
金髪や茶髪に染めた、この日のためにセットした髪型の女たちの中で、深井夏澄の姿を探す。彼女は黒髪だから、見つけやすいはずだけどーーー
「あ、あれが深井か。金髪になって、ますます可愛くなってるな」
同級生の一言で、彼女を見つけた。その姿は、僕が想像していたものとは違っていた。派手な化粧をした彼女の髪の色は、欧米人のようなブロンドカラーに染められていた。
驚きのあまり、口が開いてしまう。あれ、彼女は部活の決まりで染髪はできないんじゃ?
「いやー、やっぱり深井は美人だな。お前もそう思うだろ?」
反応に困ってしまう。あの、清楚で飾り気のない、化粧気の薄い深井夏澄はどこに行ったんだ?脇目も振らず陸上競技に打ち込んでいたのではないか?
「あ、そっか。お前は深井に興味ないんだったな」
そう言うと、友人はつまらなさそうな表情を浮かべた。
「あ、岸さん」
急に彼女が近づいてくる。強張った顔ではいけないと思い、慌てて口角を上げた。
「1年ぶり?だね。髪染めたんだ」
「うん。似合ってる?」
「似合ってるよ」
こういうときに本音を言えない自分は嫌いだ。でも、幸せそうな顔をした彼女の気分を害することは、もっと嫌だった。
「髪、染めてよくなったんだ。良かったね」
「ん?あ、陸上は辞めたんだ。もういいかなって」
「、、、、、そうなんだ」
「うん。じゃね。また同窓会で」
そういうと彼女は、別の女子の元へと向かっていく。1年前、フードコートで会った彼女の姿は幻想だったのだろうか?変わりゆく同級生と同じように、彼女も変わっただけじゃないか。そう言い聞かせようとするけど、頭が言うことを聞いてくれない。袖をまくれなかったあの日と同じ、純真で清楚で素朴な彼女を無意識に求めてしまう。髪色が変わっただけじゃん。化粧が濃くなっただけじゃん。陸上をやめたから、だから、なんなんだよ、、、共に過ごしたあの日々が、消えるわけじゃないのに。それでも、僕が思う「深井夏澄」の定義から外れた彼女は、別の誰かのように感じてしまった。僕が望む彼女の姿は、彼女がなりたい深井夏澄の姿とは違っていたんだ。そのことを残酷に突きつけられた瞬間、あの日の後悔は消え失せた。代わりに僕の胸に去来したのは、言葉で表しようもない、漠然とした虚しさだった。
あの日の君が好きだった ー成人式での再会ー 春山純 @Nisinatoharu
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