変わらない君
大学一年の冬、帰省した僕は、最近地元の海沿いにできたという、ショッピングモールに行っていた。知り合いが働いているというラーメン店で注文してみたものの、知り合いは奥の方にいるのか、姿が見えなかった。フードコートには、親子連れや若いカップルなど、多くの人が集まっている。これだけ人がいれば、知り合いの1人や2人がいてもおかしくないな。僕は、端の方にある2人用の席に腰掛け、携帯を触りながらラーメンができるのを待っていた。
「岸さん?」
突然声をかけられ、驚いて顔を上げた。長い黒髪をまっすぐにおろした、化粧気の薄い女。そんな飾らない美人こそ、深井夏澄だった。
「、、、深井さん?」
驚きのあまり、反応が遅れてしまう。
「久しぶり。こっち、帰ってきてたんだ」
「うん」
僕が県外の大学に行ったこと、知ってるんだ。それが、彼女の脳内に刻まれるほど重要な情報であったことに、驚きを感じた。
「岸さん、昔とあんま変わってないからわかりやすかった」
「ああ、髪も染めてないしね」
「うん。中学の友達、結構髪染めてる子多いから」
確かに、中学時代自分と同じように地味目だった人も、夏休みにあった時には派手な髪色になっていた。女子は半分くらいが茶髪になっていて、みんな同じように見えてしまう。根元がずいぶん黒くなった金髪をしている元男子学級委員は、輩のようだった。
「深井さんは、髪染めてる?」
「私?私は地毛だよ。その、部活の決まりで」
あ、そういえば彼女は中学の時陸上部だったな。
「陸上部、だっけ」
「そうそう。高校は陸上の強いところに行って、今は東京の大学に行ってるの」
「そうなんだ」
大学の体育会でバドミントンをしている僕としては、同じように大学生になっても真面目に部活をしている人を見つけ、喜びを感じた。彼女が中学時代から変わらず、飾らなくとも魅力的な雰囲気を醸し出していることが嬉しかった。
「あ」
いつの間にか、ブブブ、と呼び出しベルが鳴っている。ラーメンができたようだ。
「あ、ラーメンできたんじゃない?じゃ、またね」
颯爽と手を振って行く彼女は、やはり爽やかだった。
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