活呑

謎のボタン「開」。



少年はそのボタンを見て、ずっと悩んでいた。取りつかれていた。

「開」の隣には「閉」もある。 どちらかでいいはずなんだ、このボタンは。


よく考えてみよう。 少年は長く息を吐き、気持ちを整える。


そもそもエレベータは、指定の階につけば勝手に開く。閉めたいときは「閉」を押せば良い。

開いているのに「開」を押す必要はないし、誰かがドアに挟まったら、安全装置で勝手に開く。

つまり、基本開くのだから、あらためて「開」く必要はないのだ。


生き急いでいる者だけが「閉」じる。

しかし、少年は自分も「閉」を押すのだから、この仮説は当てはまらないと思った。


チーン。4Fについた。

山田さんが乗ってきた。静かに1Fのボタンを押し、「閉」を押す。



少年は静かに見守る。

籠が下りていく感覚・・・ 止まる。 1Fだ。


山田さんは不思議そうに少年を見て、外へ歩いていった。



少年はただ、ボタンを見つめていた。


扉がゆっくりと閉じていった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

活呑 @UtuNarou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る