第6話

『さて、今日から年少さんとして皆さんで仲良くしていきましょう。まずは皆んなでご挨拶。おはようございます。』


「「おはよう、ございます…」」



怯えながら声を発する子供達。愛もその中の1人である。



『皆さんお上手です。毎日挨拶をしましょうね。それではまずは………』



愛の頭にはなにも入ってこない。愛情のない、優しさを持たない目の前のAIは、なにを言っているんだと言うことだけが頭の中をぐるぐると駆け巡るだけ。



『それでは誰かと2人ペアになって、お部屋の中をお散歩してみましょう。』



『…愛。誰のところに行きますか?』


「………」


『愛…?』


「あ、愛は青くんとがいい…」


『………』



青くんとはAC709のことである。AC709は愛の好きな青色の目をしているからそう呼ばれていた。


機械なので顔のパーツなど変更することは可能だ。だからAC709は愛が青が好きだと言ったその日には黒かった目ではなく青い目になっていた。


AC709は販売所に行き、青い目を購入する時、自分は何をしているのだと自問自答し、数分間そこに立ち尽くしていたそうだが、自分の腕の中ですやすやと眠る愛を見れば、その迷いも一瞬で晴れたそうだ。



「だめ…?」


『いいえ。勿論です。一緒にお散歩しましょうか。』


「うん…!」



そこで愛は漸く、幼稚園に来て初めて笑ったのだった。

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夢見る少女はやめられない 藤 みより @Sa2614mmhh

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