死を克服する方法

カゲカゲとかげくん

死を克服する方法

死を克服することはできるのだろうか。


人類史上、何千万年をかけても死を乗り越えた人は一人もいなかった。


その代わりに人は出産という方法で、半永久的に自分のDNAをこの世の中に残してきた。


しかし、人は適応するものだ。


いつかは死という生物の呪いを乗り越えた存在が現れるかもしれない。


例えば、人は幼いごろから蛇の毒を少しづつ飲ませれば、その毒に耐性ができ、大人になってもその毒に対して完全に免疫になるんだそうだ。


これらの方法は、実際に昔王を暗殺するために使われていた。


ということは、死も同じく少しづつ適応させていけば、いつかは死を乗り越えられるのではないだろうか。


そして、そのアイデアを実際に試みた男がいた。


彼は普通の30代の会社員だった。彼が最近、死の克服に興味を持つようになったのは、決して偶然ではなかった。


彼は元々体が弱い方だった。そのお陰で学校に通っていた時も、体調不良を理由によく学校を早退した。


そして会社員になった今も、その昔からの影響か、すぐ体を壊してしまい、脊髄ヘルニアや喘息、不眠症など、あらゆる病を抱えるようになっていた。


そんな中、あまりにも多くの苦痛に耐えられなくなった彼は、このままだと命が危険だと思い、様々な手段に手を出すことにした。


そこで彼が思いついた方法が「死を克服する方法」だった。


最初は、死に至る苦痛に耐えることができれば、今持っている苦痛からも自由になれると思ったのが始まりだった。どうせ、苦痛は全部同じだというのが彼のもともと持っている考え方であり、当時の彼は既に合併症を抱えているその状況に慣れているのだった。


それらのことがあった後、彼はすぐ行動に移した。まず、死を乗り越えるために、彼は約50度を越える温水に30分間身を浸した。最初はそれぐらいで、回数を重ねる度に温度と時間を少しずつ伸ばしていった。


長い間体温が上がっていると、まず現れる症状としては脱水と頭痛、立ちくらみだった。時間が短かい時は何とか耐えれたものの、時間が長くなっていくにつれ、彼の体にも限界が来た。


彼は死と生の間を彷徨った。ある時はお風呂が終わったあと、目眩がしてそのまま床に倒れ、何時間も気絶したこともあった。しかし、彼は死んでいなかった。彼は自分の予想通り、ますます死の克服に近づいていったのだ。


そして、それらの修練を続けて約3ヶ月ぐらいが経った頃、彼はついに気絶をしていても、意識を維持できる方法を見つけ出した。それは、体はシャットダウンされても、精神はまだ生きている状態に近かった。つまり、彼は肉体と精神の領域を行き来できるようになったのだ。


それからは、彼の修行は順調に進んでいった。彼は数時間気を失っても、自分がほしい時に意識を取り戻すことができた。もはや、彼の体は再構成され、どんなに大きな苦痛が襲ってきても耐えれるものになっていた。今まで彼を苦しませた苦痛も、今の彼には効かなかった。ある意味彼は死を克服し、苦痛から逃れることに成功したのだ。


しかし、これらには問題もあった。彼の死を克服する方法には、ひとつ大きな短所があったが、それは常に体を苦痛に慣らしておかなければならないということだった。苦痛をより大きな苦痛で覆い隠すことから、少しでも感覚が鈍くなってしまったり、安泰を求めてしまうと、その低く設定されていた体は、計れきれないほどの大きな痛みを味わうことになった。


彼は現状を維持するために、いつも苦しさを身近に置いて生活を続けていった。今の彼は、ほぼ半死の状態に近く、生物としての機能を失っていた。子供を生むための生物学的役割はもちろん、体の節々まで血がうまく回らないことから、肌の色が少し青色を帯びていた。


そして、彼を見る周りの視線にも変化が現れた。会社の同僚や関係者たちは、皆彼のことを心配した。誰が見ても、彼の様子は正常ではないからだ。しかし、彼は少しも他人の目を気にしていなかった。むしろ、彼はこれがいいことだと思っていた。今まで自分を苦しめてきた痛みは消えたし、これから死ぬこともないと考えていたからだ。


しかし、人生はそう甘くなかった。それから約5日後、彼は会社に出勤しなくなっていた。会社も事態の深刻さに気づき、すぐ彼に連絡した。だが、予想通り彼は電話に出なかった。そして当日、彼は家の中で死体として発見された。死因は睡眠導入剤だったという。死んだ彼の手元に睡眠薬のピルケースが発見されていたことが、その手がかりだそうだ。さらに、彼の家からは一つの日記が発見されていたが、そこには最近不眠症などで苦しんでいる内容が詳しく書かれていた。もしかすると、彼も自分がすぐ死ぬということを本能的に分かっていたのかもしれない。


その内容をよく読むと、彼は死ぬということよりも痛みをより嫌うようだった。幼い頃から体が弱く、大人になってからもあらゆる病を患い、その対策として「死を克服する」という方法を試したらしい。その方法を実施してから、自分の体に起きた出来事を些細なところまで書いていた。特に、直近一週間までは睡眠に苦しんでいるということを主に語り、その解決策として睡眠薬の服用量を増やすということを思いついたようだった。最初は、薬の効果でよく眠れたものの、時間が経つにつれて薬の効果が薄れ、また戻ってきたみたいなことを書いていた。そして、次のページをめくると、今日の日記は書かれていなかった。今日起きた出来事がそれを物語っているようだった。もう物理的に書けなくなってしまったのだろう。おそらく、彼は実際に死を乗り越えることには成功したが、睡眠薬の過剰摂取による影響で再び現実に戻ることができず、そのまま天国の世界へ足を踏み入れたのかもしれない。これが、初めて死を克服した男の短い物語だった。日記を読んでいた刑事は、目を閉じて胸の中央あたりに手を置き、彼の魂が無事天国へ届くよう神に誓いながら静かにノートを閉じた。







あとがき : この小説は、筆者が冬の寒さから逃れるためにお風呂に入っている時に、ふと思いついて、いきなり書き出して作り上げた小説です。皆さんは、死の克服についてどう思いますか?私は神の存在は信じないのですが、もし、死ぬことから逃れた人、もしくは、逃れることができるとしたら、どうなんだろうとよく思います。もちろん、人は生まれた以上、この世からいなくなるのは避けられないと分かっていますが、将来、医学が発達して永遠に生きることも可能になるかもしれません。何かご意見があれば、いつでもお気軽にコメントで教えてください!


最後まで読んで頂き、ありがとうございました。


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