六本の足

perchin

六本の足

 冬の夜。

 リビングの中央に置かれたこたつが、我が家の世界のすべてになる。

 俺はビールを片手に、読みかけの文庫本を開く。至福の時間だ。

 向かい側から、布団が持ち上がる。

 小学六年生の次男だ。ゲーム機を持ったまま、無言で下半身を滑り込ませてくる。

 ヒヤッ。

 俺のふくらはぎに、氷のような物体が触れた。次男の足だ。

「離れろよ」

 俺は眉をひそめて言った。

「いやだよ」

 次男は悪びれもせず、さらにグリグリと冷たい足を押し付けてくる。

 今度は横から、長い足が侵入してきた。

 中学二年生の長男だ。

 ヒヤッ。

 長男の足もまた、外気で冷え切っていた。それが俺の太ももの裏に触れる。

「……だから、冷たいって」

 俺は溜息交じりに抗議する。

 狭いこたつの中で、男三人の足が絡み合う。鬱陶しいことこの上ない。

 こたつの赤外線ランプが、狭い空間を赤く照らしている。

 俺の足に、二人の息子の足が重なっている。

 冷たくて、重くて、邪魔だ。

 でも、次第にその冷たさが、互いの体温で中和されていく。

「……狭いな」

「狭いね」

「足、どけろよ」

 誰も動こうとはしない

 俺は再び文庫本読み始める。

 男三人の暮らし。

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六本の足 perchin @perchin

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