サブスク:良い夢見せてあげる屋さん 月額500円

メトロノーム時計

第1話


 突然だが俺には不思議な能力がある。


 簡単に説明するなら、夢の内容を自分の好きなように操れるというもので、人生がちょっとハッピーになる程度の能力だ。


 物心ついた時から当たり前にあるものだったから、最初はみんなも持っているものだと勘違いしていた。


 毎日ケーキやお菓子を食べまくる夢や遊園地で遊びまくる夢を満喫していた昔の自分からすれば、怖い夢や悪夢の話しなんてものはずいぶん変な趣味をしてるんだな〜と軽く考えていたくらいだ。


 そう軽く考えていた。


 だから悪夢を見て怖がっていた友達に「なんでそんなこわいゆめをみようとしちゃったの?」なんて、無自覚に煽るようなバカなことをして喧嘩にまで発展することになる。



「そんなこというならおまえがケーキのゆめみせろよ!」

「やってやるよ!」



 結局こんな感じで売り言葉に買い言葉が続いて、その日の夢の注文はケーキをいっぱい食べる幸せな夢で決定。


 結論から言えば俺は人の夢も操作できた。


 意識さえしてれば相手のその日に見る夢の内容まで変えてしまう力が自分にはあったのである。

 

 この能力のおかげで近しい友達にはチヤホヤされることもあったし、年齢が上がって能力を俗な目的で使ったりすることもあった。 



「自分は特別なんだ!」

 


 持って生まれた夢を操るだけの能力は思いのほかずっと強力で、能力の検証を進めたり発想で捻った使い方をするほどに、自分は特別なんだという勘違いが積み重なっていく。


 こんな状態で中学に進級して、思春期真っ只中で厨二病をこじらせて思い上がった自分は勢いに任せて行くところまで突っ走り、、、失敗した。


 最終的に、高校生になった今では反省と戒めから私生活で能力を使うことを辞めて、ネットで細々と小遣い稼ぎをする程度に留めている。



『サブスク:良い夢見せてあげる屋さん』



 ふざけた名前と月額500円という怪しい安さをしているこのサブスクは、ネットの片隅でひっそり営んでいる割にはどうしてか盛況である。


 今までのやらかしを反省して能力の使い方も派手ではない上に、サイト自体も中々辿り着けないようなレベルなのだが、そこまでして辿り着いた顧客というのは、どうやらずっと根強いらしい。


 顧客の幅はとても広く、ストレスを抱えた社会人から事件に巻き込まれたトラウマを持つ主婦、炎上騒ぎで誹謗中傷に壊された芸能人や眠る家もないのにサブスクするホームレスなんてのも居た。


 まあ客層の話しはひとまず置いておくとして。


 こんなふざけたサブスクにも縋るほどの人間は殆どが闇深い経歴を持っているもので、軽い気持ちで始めた自分も半ば福祉活動として向き合った結果、どこか依存めいた雰囲気を顧客から能力越しに感じることもある。


 しかし何はともあれ、こんなサブスクで一般的な高校生のバイト代くらい稼げている現状は俺からすれば大歓迎だ。


 能力の使い方としては過去と比べれば全然地味で目立たないレベルであるし、顧客関係のちょっとしたリスクくらいならモーマンタイだね。



 人生ちょれーー!!






 ◆◇◆◇






 このときの彼は知らなかった。


 人の身に余る能力を派手に使いまくった因縁が過去から迫ってきていることを…


 怪しいサブスクとかいう舐めた能力の使い方で現在進行系で不穏分子を育てまくっていることを…




 そして、、、


 現代ファンタジーのこの世界で、人間の中身とも言える夢を無造作に貪ったツケは、アクション・サスペンス・ホラー・ラブコメ・SF あらゆる方向から回ってくるということを…




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