六歩目 仁義なき争い

「てめぇらぁぁぁ! 絶対許さねええぇ!!」

「血祭りに上げてやるぜぇぇ!!」

「ギャッハー!!」


—————10分前


暗闇を疾走していたバイクが、急ブレーキ

タイヤの悲鳴がこだます中


「サーチ!」


黄色いモヒカンの目が黄色く光る。

視界がズームアップし、血溜まりの中に転がる肉塊を捉えた。


「…は?あ…兄貴!?」


頭が潰れ、歯が飛び散り、ほとんど原型を留めていない。

赤と青のパトカーの回転灯が、血溜まりを妖しく照らし出していた。

黄色いモヒカンが、獣のように震えた。


「イエローよりレッドへ! 兄貴が…兄貴がサツにやられたぁぁ!!」

≪ああ!? 確かなのか!?≫

「もう取り囲まれてんだ!どう間違えろってんだ!?」

≪なっ!?…許せねぇ!!野郎共、戦争だあぁぁ!ギャッハー!!≫

≪ギャッハー♪≫



—————現在



「てめぇらぁぁぁ! 絶対許さねええぇ!!」

「血祭りに上げてやるぜぇぇ!!」

「ギャッハー!!」


恐ろしい改造バイクにまたがり、チェーンソーやら鎖を振り回し、火花を散らす。

市民は血相を変え


「ギャ、ギャッハー団!?」

「逃げろぉぉ!!」

「ダメだ、後ろにもいる!!」

「嘘よ!?私明日結婚式なのよ!?」


悲鳴が重なり合う。

押し合いへし合いで転ぶ者、頭を抱えて震える者

海に飛び込もうとする者まで現れる。

ネットでは…


『ギャッハー団キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』

『おい警察動けよwww仕事しろ仕事!!』

『ギャッハー団?なんそれ?』

『情弱乙www』

『マジレスすると、警察も手が出せない連中だぞ』

『どんな奴でもギャッハーって笑いながらチェーンソーで切り裂くらしい』

『生きたままパーツ集めが趣味って話もある』

『陰謀論…乙っ!』

『今にわかるさ(意味深)』

『現場の警官さん、生きて帰ってこいよ…』

『いやマジでヤバイって、あいつらマジでヤバイんだって!!』


警官隊もパニックに陥っていた。


(ギャッハー団!?何故!?)

(あの血塗れ男だ!俺達がやったと勘違いしてるに違いない!反撃するか!?)

(馬鹿野郎!上から『関わるな』と厳命されてるだろうが!!)

(じゃあどうするんだよ!?このままじゃ濡れ衣で皆殺しだ!俺は明日結婚式なんだぞ!)

(落ち着け!!深呼吸しろ!)

(これが落ち着いていられるか!敵はもう目の前なんだぞ!!)


ブロロロロロ!!!

ヴィイイイイン!!


地を揺らす爆音とチェーンソーの唸りが迫りくる中、隊長格の警官が声を張り上げた。


「俺が時間を稼ぐ!その間に本部に連絡を!なんとしても増援を寄こさせろ!!」


『了解!!』


一斉に敬礼

隊長は震える手を左手で押さえ、拡声器で声を張り上げた。


≪止まれ!!この男をヤッたのは我々ではない!!繰り返す…≫


「ああ?どうするレッド、あんな事言ってるぜ?」

「へっ、どうせ時間稼ぎだろ」

「だな、このまま突っ込む!」

「いや待て、余興と行こうじゃねぇか。奴等がどんな言い訳するのかをよw」

「趣味がわりぃな。だが確かに…おもしれぇ」

「だろ?納得したフリして…皆殺しにすんだよ」

「最高の余興だ!!…って事だ野郎共!≪全団停止≫」


『ギャッハー♪』


隊長の目の前で、バイクの群れが一斉に急停止した。

ゴムの焦げ付いた匂いが漂う中、爆音がピタリと消え

色とりどりのモヒカン達が、警官隊を取り囲んだ。


「で?」


赤モヒカンのレッドが、隊長の鼻先まで詰め寄る。


「あ、ああ!君達の仲間をヤッたのは我々ではない、信じてくれ!」


デコをくっつけ、レッドの目が赤く迫る。


「ざけんなよ…?ネタでもあるのか?ああ!?」

「あ、ああ!もっ勿論だとも!」


レッドはにやりと笑い


「それじゃ、見せて貰おうじゃねえか、そのネタとやらをよ!!」


隊長はぷるぷると指も声も震わせ


「…こっ…この脳無しだだっ!こいつが…こいつがやったんだ!」


私を指差した。

色とりどりのモヒカン達は、一斉に、舐める様に私の…


ぼさぼさの頭

ぼろぼろで血に汚れたトレンチコート

血に濡れた素足

震えるねこを抱き締め

肩に不気味なねこのぬいぐるみ


妙な静寂が支配した——


(…ルナ)

解ってる


心を詠み、素早く分析

警官隊総数10程度、実戦経験ほぼ無し

ギャッハー団総数…30程度

…実勢経験有

装備確認…

警官隊勝率…ほぼ0%

つまり

チャンスがあるとすれば…最初の衝突時

逃走成功率…99%

どう?月影

(…それでいい)


静寂が、破られる——


「……てめぇ……」


レッドの顔が、ゆっくりと歪んでいく。


「俺たちゃよぉ…」


目を血走らせ、肩が震え出す。


「どんな言い訳するかよぉ…それを楽しみにわざわざ喋らせてやったってのによぉ…」


青モヒカンが青筋を立てて、静かに言った。


「するってぇと何か…?お前等はこう言いたい訳だな………………」


緑モヒカンが、チェーンソーの紐を引っ張り、グリングリンさせながら


「こんっっなガリッガリでぇ?

ボロッボロでぇ?

脳無でぇ?

しかも女でぇ?

しかもしかも、ねことヤベェぬいぐるみ背負ってるガキにぃ?

俺等の…兄貴がぁ…?」


隊長は、みるみる青ざめ


「おっ、お前達の言いたい事は解る!じっくりと話しを…


が、レッドが顔をに真っ赤にし遮った。


「兄貴が、こんなガキに…殺られる訳…」


両足を踏ん張り、拳を硬く握り締め


「ねぇだろうがあぁぁぁ!!」


空中を飛んできたドクロとモヒカンの旗を、レッドは片手でキャッチし、高く掲げた。


「野郎共ぉぉぉ皆殺しだぁぁぁ!!!」


団員達は一斉に身を屈ませ…


≪ギャッハー!!≫


飛び跳ねた!

チェーンソーが空吹かしされ、火花が爆ぜる。

バイクの爆音が息を吹き返した!


「いやぁぁぁ!!」

「もう終わりだぁぁ!!」

「明日結婚式なのよ!?」


ネットの声も飛び交う。


『火に油ワロタwww』

『だから交渉人を呼べとあれ程』

『逆効果過ぎて草』

『警察終わったwww税金返せ!!』

『世紀末キタコレ』

『どうなるの?ねえ、これからどうなるの!?』


隊長はバッ!っと振り返り


「本部と連絡は!?」


警官が今にも泣き出しそうな顔で


「ダメです!『増援は出せない、現戦力で市民を死守せよ』の一点張りで…!」

「くそっ!状況は最悪だっ!!」


地を踏み付け、銃を構えた。


「止むを得ん!市民を死守する!総員シールド、構え!!」

「ちっくしょうが!絶対生き残って、明日からハネムーンに行ってやる!!」


青白いチップの目が、一斉に本気の光を宿す。

腕から透明なエネルギーシールドを展開させ、迫りくる世紀末集団に突き出した!


私は、いつでも飛び出せるよう身構えた。

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ねこの世界征服~チートを封印され、それでも諦めない理由が滅茶苦茶過ぎた~ にゃむ @nyamuzaemonn

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