帰省

☒☒☒

第1話

 大型連休で帰省する。

 近所のスーパーやら大型のショッピングモールに家族で行ったりして結構楽しい。

 懐かしいスーパーのお惣菜やら、御当地のお菓子など食べることについては特に東京都の違いを感じる。

 東京のほうが何でも手にはいるはずなのに、やはり地元にしかないお菓子や美味しい食材などがあるのだなぁと感心して、旅行に行きたくなる。

 ところで、大型の店舗などに行くとおそらく知り合いに会うことになる。

 私は地元でうまくやれてた人間ではないので、誰か見かけても基本的に見なかったことにしたい派である。

 まあ、相手も私なんかに興味ないだろうし。

 地元を離れて人の目を気にせず個性強めな好きな服を着て、気が向いた時に本で紹介されている有名なお店に行ける。

 そんな生活を送っていると、田舎特有の妙に湿度と親密度が高い熱気に息ぐるしくなる。

 今日もなんとなく近所のお店を歩いていると見知った顔を見かけた。

 同じ高校に通ったことのある子だ。

 休日はロリータファッションに身を包んで過ごすらしい。

 羨ましくも私は彼女のことが苦手だった。

 私も当時ロリータファッションに憧れていたけれど、靴下一足買うことができないチキンでそんな自分を見透かしているのか、なぜか彼女に言いがかりをつけられたことがあった。


 よりにもよってそんな相手と鉢合わせるなんて。

 そう思い私は彼女を見なかったことにして買い物を続けた。

 高校の頃に流行ったデザインのTシャツまだ着ている彼女を見て、すごいなと思いつつ。

 できるだけ、彼女とはすれ違ったりしないように気をつけていた。

 今の私はたぶん、比較的小洒落て見えるだろうけど、彼女にかかればお洒落に憧れつつ何もできない高校生の頃のダサい自分に逆戻りになる気がしてしまったから。


 ああ、いやだ。

 今日に限って、靴が高校の頃から持っているボロいスニーカーだ。

 別に思い入れがあるわけじゃないのになんだか長持ちするものってあるでしょ?


 そんな事を考えながら買い物をして、家に帰って気づく。


 あれ、彼女って亡くなっているはずだ。

 確か、彼女の訃報を学校で聞かされた。

 でも、さっき私は彼女を見かけた……。

 背筋がすうっと寒くなる。


 やはり帰省しても下手に人と関わらないのが適切だなと思ったのであった。

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帰省 ☒☒☒ @kakuyomu7

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