第46話

 ──翌日


 私は森川さんに謝罪した。


「昨日はご迷惑おかけして申し訳ありませんでした」


 森川さんはいつもと変わらない表情。


「旦那さんとは話し合えた?」

「はい」

「……大変だな。二人とも」

「そう……ですね」

「心配だ」


 そう呟いて森川さんは戻った。


 * * *


 仕事が終わって、ビルから出ると勇凛くんからメッセージがきた。


『今日はゼミの集まりがあるので連絡が遅くなります』


 今日は勇凛くんに会えない……。

 寂しさを抱えながら駅に向かおうとすると──

 路肩に見たことがある車が。


 私は引き返そうとした。


「あ!七海ちゃんお疲れ〜」


 ──勇哉さんが待ち伏せていた。

 今日はお前か!!


 ほぼ毎日ローテーションで誰かとエンカウントするのなんなの!?


 私は逆方向に歩いた。


「何でそっち行くの??」


 追いかけてくる。

 私はやや小走りに。


「待って〜」


 勇哉さんは追いかけてくる。


「私に関わらないでください!」

「なんで?俺たち家族じゃん!」


 家族!?


「家族とか言わないでください!!」


 そりゃ私も一応戸籍上は林家の人間だけど!

 この人と家族というのに抵抗感がある。

 勇輝さんもそうだ。


「あ、こっち向いた」


 勇哉さんが笑う。

 弄ばれてる……


「あなた何しにきたんですか……?」

「暇だから七海ちゃんとご飯食べたくて」


 は?


「私は一応あなたの義妹ですけど……」

「それだとダメなの?」


 ダメというか……この人は何かが欠けている。


 私が絶望の淵に立たされていると肩を叩かれた。

 振り返ると──

 森川さんが立っている。


 なんでまたいるんだよ!


 勇哉さんは森川さんを見てキョトンとしている。


「え、七海ちゃんの彼氏?」


 なんでそうなるの?


「会社の先輩です!」

「イケメンだし。七海ちゃんやるね!」


 聞いてない?わざと?


「勇凛くんのお兄さん?」


 小声で森川さんが聞いてきた。


「はい。二番目のお兄さんです」


 私も小声で答えた。


「初めまして。七海さんにいつもお世話になってる森川と申します」


 森川さんは勇哉さんに対して突然腰が低くなった。


「そうなんだ~森川君よろしくね~」


 相変わらず何考えてるかわからない笑顔の勇哉さん。


「七海さんがそちらに転職すると聞いて。俺も転職を丁度考えていて、そちらに行きたいなーって思ってたんです」


 何を言ってるの?

 本気で言ってるの……?


「え、マジで?いいよ~おいで〜」


 いいよ?


「いいんですか……?」


 私はつい言葉にだしてしまった。


「うん。なんか仕事できそうだし森川君」


 それはそうなんだけど!

 なぜ林ホールディングスに、その場のノリで!


「本当ですか!?嬉しいです!これからよろしくお願いします」

「うん、宜しくね!森川君~」


 え、これは、どういうこと?


「じゃあ森川君これから一緒に飲みに行こうよ。いい店あるからさ~」

「はい!ありがとうございます、是非!」


 勇哉さんは嬉しそうに森川さんと車へ……。


 私は空気になってしまった。


 森川さんが振り返った。


 は や く に げ ろ


 そう口が動いた気がした。


 そして勇哉さんは森川さんを乗せて、行ってしまった。


 森川さーーーん!!


 なんでこんなことに……。

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社畜女の愛され白書 七転び八起き @7korobi_8oki

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