虫の報せ~父の時~

なかむら恵美

第1話


他界してから、各々かなりが経つけれど、父。

母の時も大変だったが、父。最初に倒れてから約1年の入・退院を繰り返した後、他界となった父の時が、より大変であった。


「急に具合が悪くなっちゃって、、、」

見舞い後、一時間以上を掛けて帰宅。やっと落ち着けたかと思うと、病院から電話が掛かって来る。

病院内で、さぁリハビリしましょうという直後に喀血する。

「申し訳ないんですが、今の医学では」

担当医師や看護師の言葉を、何度聞いたであろう。


「間に合わないから、やっちゃいます」

緊急手術も2度、3度。自宅から病院まで、おいそれとゆける距離ではない。

「はい。今から直ぐに」

ヘロヘロになりながら、その都度、答えたわたしも偉かった。


他界するどれくらい前だっただろうか?

(ん?)ふたつの出来事があった。

ひとつは、バスの車窓から見える某葬儀社が、いつもとは違って見えた。

言葉に出して言いにくい、表現しにくいのであるが、視界の中で確実に違った。

看板が、やや大きく見えたようでもある。

ひつつは、幻だったのか?

病院の通路。

いつもと同じ通路を歩き、エスカレーターに向かっているはずなのに、ふと横を見ると、霊安室があった。

全面ガラス張りの、大きな部屋。誰もいないが上座に座が設けられてあり、前に大人用の棺がひとつ、置かれてある。

(ここにもあるんだ)

目をやりながら、思う。

「虫の報せ」

そろそろですよ、と暗示するものがあったのであろう。

数日後、父は他界した。


幾ら人類が進歩。科学的根拠のないモノは、単に「吹き込み」「話題」だけで終わらせようとしていても、こういう分野。

何となくの勘というか、走るもの。気。霊的な感覚は我々にの中に残るようにも思われる。

日本人以外にも、虫の報せはあるんだろうか?

                                 <了>

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