第2話


 現今のRPG等のファンタジー世界の基調、バックグラウンドは、中世ヨーロッパ。 剣と魔法の世界。


 それは西欧の「御伽噺」、グリム童話、アンデルセン、イソップ、それらのイメージ、あるいはトールキンの「指輪物語」、錬金術や魔法、だから「科学」以前の、散文的でないロマンチックな時代背景や道具立てへの憧憬と郷愁。


 つまりは子供時代への夢…超人や魔術的マジカルな思考は幼少期の特徴的な発想。 騎士が龍を倒して姫を勝ち取る物語も、普遍無意識の元型の典型。


 そのへんはコンセンサスで、このノエヴィタイン公国の物語は、そうした物語に、いかにして「快楽」というものを絡め、肉付けしていくかの試みなのだ。


 理屈以前に、ヒトは快楽を求める。 原始的な生物の、行動の指針や、適応的か否かの判断のテスターは快感原則…ホモサピエンスはそれを忘れがちで、かえって倒錯的で滑稽になる。


 快楽主義は堕落になる。 が、度を過ぎた禁欲も破滅につながる。


 中庸ゴールデンロードは、波に浮かぶブイ、あるいは北極星のようなもので、羅針盤は対応する前頭前野の中にある。 耳石のごとくに浮かんでいるのだ。


 魔術の支配する世界観… 未分化な始原の童話。このノエヴィタイン公国という、架空のシャングリラ。 どこにもない、ありえないくらいにきらびやかで雅やかな、きわめて端正で正統的でもある、理想的な王国の中にこそ、もっとも”エロチシズムの深奥”という人類の耽美的な本質の温床にふさわしいのである。


<続く>

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掌編・『ノーブレス・オブリジュ』 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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