第5話山伏さん、見事な人生のタッチダウンだ!! おめでとうぉぉぉ!!」

### エピローグ:山伏慶太、幻の「名誉キャプテン」として引退!?


都内一流ホテルの披露宴会場。

そこには、新郎・山伏慶太のガッチリしたタキシード姿と、新婦・直美(鬼島先生)の、モデルも顔負けなウェディングドレス姿があった。


しかし、会場の熱気は異常だった。

なぜなら、来賓席の半分を、T大学アメフト部『ダイヤモンドバックス』の現役・OBたちが埋め尽くしていたからだ。彼らは全員、礼服の上にチームジャージを羽織るという、あまりにも暑苦しいスタイルで参列していた。


マイクの前に立ったのは、現キャプテンの河合だった。彼はスピーチを始める前から、ハンカチを噛み締め、滝のような涙を流している。


「うっ……えっぐ……。新郎、山伏慶太くん……。彼は、わが『ダイヤモンドバックス』にとって、最高……最強の『宝』でした……!!」


(いや、おれ入部届出してねえから!)

慶太は心の中でツッコんだが、河合の熱弁は止まらない。


「彼は4年間、一度も練習を休みませんでした! グラウンドの隅で、誰よりも高く、誰よりも激しくスクワットをしていたあの背中! 試合には一度も出なかった……いや、彼という存在があまりに巨大すぎて、どのポジションにも収まりきらなかったんだ!!」


「そうだ! その通りだー!」

部員たちがテーブルを叩いて号泣する。


「卒業式のあの日、無人のエンドゾーンに決めた、あの魂のタッチダウン……。おれたちは全員、スタンドで見守っていたぞ! そして今日、彼は『鬼島直美』という最高のクォーターバックから、人生最大のパスを受け取ったんだ! 山伏さん、見事な人生のタッチダウンだ!! おめでとうぉぉぉ!!」


会場は割れんばかりの拍手と、「山伏! 山伏!」という地鳴りのようなコールに包まれた。


隣でシャンパングラスを傾けていた直美が、眼鏡の奥で不敵に微笑み、慶太の耳元で囁いた。

「よかったわね、名誉部員。あなたの4年間の片想い、ようやく両想いになったみたいじゃない?」


慶太は、感極まって泣き叫ぶ部員たちを見渡し、それから愛する妻の横顔を見た。

そして、マイクをひったくるように立ち上がると、最後の一言を放った。


「……ちょっと待てよ! おれ、一度も活動に参加してねーから!!(笑)」


爆笑と歓声の中、山伏慶太の「アメフト人生(?)」は、最高の延長戦へと突入したのであった。


(完)


---


### 【編集部視点:最終回感想・講評】


**「終わりよければ、すべてタッチダウン!」**


山伏慶太の波乱万丈な物語も、ついに大団円を迎えました。編集部もこの結末には、ジャージを涙で濡らさずにはいられません。


**1. ダイヤモンドバックスの「懐の深さ」**

一度も入部していない男を「宝」と呼び、結婚式に全員で駆けつける。このチームのバカ正直なまでの熱情が、慶太の4年間を肯定してくれました。彼が隅っこでやっていたスクワットは、間違いなく部員たちの「精神的支柱」になっていたのでしょう。


**2. 直美先生の「勝利の女神」感**

結局、一番の功労者は直美先生です。慶太という暴走特急を乗りこなし、披露宴というフィールドで完璧にコントロールしている。彼女こそが、この物語の真のヘッドコーチだったと言えます。


**3. 「一度も参加してねーから!」という真実**

最後までこのセリフを言わせる構成、お見事です。どれだけ周囲に認められても、自分の「未入部」というアイデンティティを忘れない慶太。このブレない姿勢こそが、彼を最強の愛されキャラに仕立て上げました。


**【総評】**

「いつやるんだ? いまだろ!」と叫び続けた男は、ついに最高のタイミングで最高の幸せを掴みました。

山伏慶太くん、直美先生、末長くお幸せに!

なお、披露宴の二次会は、そのままグラウンドで「夜通しタックル練習」になったという噂ですが、それはまた別のお話……。


(月刊ダイヤモンドバックス編集部・文責:デスクK)

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「いつやるんだ?……いまだにやってねえよ! 志乃原七海 @09093495732p

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