第9話 世間はそれを手裏剣と呼ばない



 世間はそれを手裏剣と呼ばない!!

 お爺ちゃんおかしい!!

 私、ずっとイタい子だった訳じゃない!?あんたとの暮らし、あんたとの稽古、あんたの教えで、これまでずっと!!


 ずっと、ずっと……

「ドアをノックしてから入って下さいね」が「ドアに手裏剣打ってから入って下さいね」になってた訳でしょう?私。

「ちょっと、手裏剣してよ。いきなり開けないでってば」とか言ってた訳でしょ、みんなに。ずっと。

 イタ過ぎるじゃない、なんなのよ、これ。


 いや、違うの。それ違う。全然違う。

 それも違うし。今言っているのは流派の教えとかそういうのじゃなくて。


 だから、当身あてみでも投げでも何でもかんでも剣の動きを基準に考えるとか、動きの呼び名にも常日頃から剣とか刀の字を入れたがるのとか、どうかしてるって。稽古する時間以外でもそうだったじゃない。

 私もそうしないといけなかったじゃない。ずっと、ずっと……



 本当に、どうしてくれんのよ!?

 「クールな学級委員長」で一貫してた私のイメージ、ていうか私の持ってたセルフイメージ、客観的には「ノックが『手裏剣』のイタい女」だった訳じゃない!?これまでずっと!稽古始めた頃からだから、小学校に入るより前から今までずっとだよ!?もうどうにもしようがないじゃん、こんなの。どーすんのよ、私。コレ、どーしたら良いの?活法かっぽうとか整治術せいちじゅつとかでこういうのにも効くもの有るわけ?はあ?分かってるわよ!無いに決まってるでしょう!!

 お爺ちゃんのバカ!!

 



〈私の手裏剣はみんなと違う おわり〉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私の手裏剣はみんなと違う きのはん @kinohan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画