傀儡師

余白

傀儡師

───顔も名前も知らない彼女に、僕は玩具にされた。


僕は普通に生きていた。

少なくとも、自分ではそう思っていた。

誰かの期待に応えるために振る舞うことはあっても、それは役割を理解した上での選択だったはずだ。


けれど、君は違った。


僕の意図とは無関係に、君は僕を切り取り、並べ、意味を与えた。

それを君は「愛」だと呼んだ。


一瞬ごとに切り取られる僕は、次第に振る舞い方を失っていった。

何をしても、どう動いても、君は君の好きな物語を重ねる。

それは僕を見ているようでいて、実際には僕ではない何かを見ている行為だった。


視線は向けられているのに、理解はされていない。

名前を呼ばれているのに、人格には触れられない。


僕はいつの間にか、操り人形になっていた。

君の期待どおりに動くことを、無言のうちに強要される存在。


糸が張られているうちは、拍手がある。

糸が切れた瞬間、僕は落ちる。


壊れたわけじゃない。

ただ、もう動かないという理由だけで、僕は役目を失う。

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傀儡師 余白 @YOHAKUSAN

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