明日のたまご🐦🥚【カクヨムコン11お題フェス『卵』参加作品】

夢月みつき

本文「明日のたまご」

 宇宙の果ての地球という青く美しい星に一柱の神さまがいた。

 その神さまは、「明日あすの鳥」を星に生きるもののために創り、神さまにお仕えする神の使いの女の子ルルに毎日、欠かさず鳥の産んだ卵を割るように伝えました。



 神さまの創った「明日のたまご」を割ると次の日が来て日が昇り、生き物たちの生活が始まる。

 日が暮れるとまた、夜のうちにルルは卵を割って明日を産まなければなりません。



 明日の鳥と言う「明日のたまご」を産む、しましま模様の鳥の巣から毎日、卵を取りに行き、卵ケースにたくさん、ストックしておかなければなりません。




「ああ~、毎日、めんどうだなぁ」



 ルルは面倒くさそうに溜め息を吐きました。

 彼女は、最初の100年は真面目にお仕事をしていたのです。

 

 でも、たまには卵を割らずに、鳥の巣に行かずに……「遊びたい、楽したい」ルルは、そう考えるようになりました。




 そして、ある日、ルルは神さまに報告せず鳥の卵を取りに行かずに卵ケースのストックをわざと切らしました。

 

 その日は、「明日のたまご」を切らしたまま、朝から晩まで友達と遊んで家に帰ってきました。



 帰った頃には、卵を割る時間がとっくに過ぎていてルルは、そのまま夕食を食べて寝てしまいました。


 次の日、明日が当たり前のように来ると思っていた、人間や生き物たちは朝が来ない夜の中で、不安なまま過ごしました。

 ルルは「自分がしなくても誰かがしてくれる」と高をくくっていました。




 でも、神さまはルルを信じていましたので、地球の明日が来ないことを知ると悲しみ、天からルルの元へ降りて来ました。



「ルル、どうして明日が来ていないのじゃ? いつもの時間に「明日のたまご」を割らなかったな」



 神さまは、悲しみと焦りを含んだ表情で、ルルを見つめました。



「神さま! ごめんなさい、でも、私がしなくても誰かがしてくれるでしょ? そんな顔しなくても……!」



 しかし、渋い顔で神さまは首を左右に振ります。



「わしは君を信じておった……じゃが、ルル、君ばかりを頼り100年以上もまかせてしまったのは、わしの責任じゃ」



「神さま……これからどうなるんですか? もう明日は来ないの」


「このままではいつまで経っても来ない、今、卵を割ったとしてもじゃ」


 ルルは真っ青になり慌てふためいた。


「えっ、それじゃ……この星の人や生きものはどうなるんですか!?」



 神さまは白いヒゲを触りながらルルに伝える。



「……わしがなんとかするから、これからは「明日のたまご」はいらなくなる」



 ルルはそれを聴いて大いに喜んだ。

 神さまの御力でなにもかも良い方向へ行くと楽観的に考えていた。


 でも……



 神さまは自分の命と引き換えに世界に“明日”を産み出した。

 神さまは光になって、世界を覆い絶滅の危機に瀕していた生きるもの達を救った。




 大好きな神さまがいなくなり、ルルがこの世界の神になった。

 この地球という世界で一柱の神、ルルは孤独と悲しみで涙が止まらなかった。

 自分が、神さまを追い詰めてしまったのだと、解かった時には何もかももう遅かった。



 それから、ルルは休まず神の仕事に励むようになった、寂しさから神の使いをたくさん創り、側に置いた。



 そんなある日、ずっと長い時を静かに過ごしていた「明日の鳥」が100年ぶりに卵を産んだ。その中から生まれて来たのは小さな神の赤ん坊だった。



 ルルは涙を流しながら赤ん坊に「もしかして、君は“神さま”の生まれ変わりなの?」と声を掛けた。


 すると、その子はルルの姿を瞳に映して天使のような笑顔でにこっと笑った。


 おわり



 ここまでお読みくださり、ありがとうございます。

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