『九十歳の老婆が格ゲーで世界大会の予選に出る?リアルじゃねぇよ!』そう思う人がいるかもしれません。『どうせお涙頂戴ものだろ!』そう思う人もいるかもしれません。しかし、この作品は恐ろしいほどリアルです。シニカルに物事をとらえ、どこか戦うことを諦めた理由をそれっぽく並べる人に、美しくも冷たい刃を突き立てます。この作品の主人公、夜桜氷雨。彼女は戦いました。負けもできない者に、彼女を嗤う資格はない。勇気を持って、読んでみてください。
施設で静かに「終わる準備」をしていた90歳の女性が、一本の格闘ゲームと出会った瞬間から、この物語は動き出します。生きる理由も、語る相手もいない日々——そこから始まる導入が、まず強い。けれど本作が巧いのは、絶望を“暗いまま”で終わらせないところです。彼女が初めて口にする「もう一回」は、勝利のためというより、人生を続けるための小さな宣言として刺さります。
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