第7話 一歩
家に着いて丁度雨が降り始め、日も沈んですっかり暗くなった。もうすぐ出発する時間だ。
「もう少し住民が寝静まったら出発するが、準備はできてるのか?」
「うん、いつでも行けるよ」
そんな時呼び鈴がなった。夜遅いのに一体誰だろうと玄関の方へと向かおうとした時、外から数人の話し声が聞こえてきた。
“本当にここに妖精が居るのか?”“密告者が言うにはこの家の住民が隠してるって話だ”
恐らく、この声は国兵の人達だ。
「なんで、俺達が居ることがバレてる? ……おいお前、誰かに俺達のこと話したな?」
「ごめん、信頼出来る一人にだけ」
「それでこのざまか、やっぱり人間なんて。てか、密告者には謝礼金が入ることも知ってるはずだろ。それを警戒もせずにベラベラ喋るなんてどんだけ馬鹿なんだよお前」
「でもまだあの人が密告したとは限らないんじゃ……」
「じゃぁなんでこうなってんだよ。ああ、今となってはもうどうでもいい。とにかくまずはここから出ないと。この感じじゃ正規ルートから国を出るのも無理だな……」
「あ、それなら裏の川からいこう。あの川は外に向かって流れてるけど、人が通るような所じゃないから検問もしてないはず」
僕達は、こっそり裏口から出て一直線に川へと走った。だけど大荷物と雨でのぬかるみのせいで僕は足を滑らせて派手に転んだ。その拍子に荷物の中の物をいくつか落としてしまった。その音で国兵に気づかれ追いかけて来た。
「拾ってる暇はない! 行くぞ!」
落とした物の中には、じいちゃんがくれた人形作家専用道具もいくつかあった。でも、ここで捕まってしまえばそれこそ全てが台無しになる。僕はグッと堪え、川までひたすら走った。先に着いていた妖精がボートに固定されていたロープを外した。固定されていた船が川に沿って流れていく。僕は全力で走り、力強く地面を蹴って大きな一歩を踏み出し船に飛び乗った。雨の影響でいつもより川の流れが早かったおかげで、なんとか国兵も撒いてこの国を出ることが出来た。
そして、ここから僕達の旅と出会いが始まる。
妖精の星 auctorアウクトール ミミ @anetde
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